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元SKE矢方美紀さん「この先恋愛もできないんじゃ…」 乳がん治療で抱えた不安と葛藤
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卵子凍結には助成金制度も 年齢や環境を熟考して決めたそれぞれの選択
――女性には妊娠という一つのライフステージに向けて、卵子凍結の選択への判断もされたと思います。
矢方:抗がん剤治療が始まると生理が止まる、生殖機能にダメージがあるかもしれないと聞いて、その前に卵子凍結をすべきなのか考えました。罹患する数年前、卵子凍結を特集した番組を偶然観ていて、その時初めてそういう方法があると知りました。番組で取り上げられた女性は30代後半、がん治療などではなく今は仕事を優先したいという理由で凍結を選んでいたのですが、それをふと思い出して医師に相談したんです。
ただ、実際やるとなると、金銭面やパートナーの有無など、考えなければいけないことがいろいろあって。10年後に結婚しているか分からない。その間ずっと卵子を凍結し続けるということがかえって精神的な負担になるのではないか。今の時点では重荷になると感じてしまったんです。
治療によって絶対に妊娠できない、生理が来ないわけではないとのことだったので、ゼロではないのであれば少ない可能性にかけてみようと思いました。たとえ将来的に排卵できない、卵子が作れないとなっても、医療技術の進歩で何か対応できるかもしれませんし、子どもがいなくても夫婦で幸せな生活を送っている方はたくさんいます。それなら今は自分のやりたいことを思いっきりやろうと思って、卵子凍結はしないと決めました。
島田:私は治療前に卵子凍結をしました。乳がんの治療に関係なく、今の私の年齢の時点で一般的に妊娠の可能性自体が低く、高齢出産でもあります。さらに最低5年の治療後は44歳、その時点で子どもを望んでいるか、妊娠できる状態なのかは分かりません。ただ、未来は分からないからこそ、可能性は残しておきたいと思ったんです。また、費用の問題は大きいですよね。私の時は、若年性がん患者向けの助成金制度があったので、金銭的な心配や負担はほとんどありませんでした。もしこれがなかったらやっていなかったと思います。
ただ、矢方さんのお話を聞いて、卵子凍結するもしないも「少ない可能性にかける」という意味では、どちらも同じようにポジティブな選択なのだと感じました。きっと年齢によってもこの決断は変わってくるように思います。
矢方:そうですね。私がもし35歳でその決断を迫られたらやっていたかもしれません。きっとその時の自分の状況や年齢で変わるのではないかと思います。
周囲への相談は? 年上の女性や経験者の意見を参考に
――こうした治療におけるさまざまな決断の際には、どなたかに相談されていましたか?
矢方:同世代の友人はどうしてもまだ他人事なところがあったり、相談しても逆にパニックになったりしてしまう子もいました。また、元々家族には仕事やプライベートについてあまり相談しないタイプだったので、私は当時働いていたアパレル店のオーナーによく相談していました。
日頃から悩みを聞いてもらったり人生相談に乗ってもらったりしていたので、乳がんの疑いがあるという時から話していて、乳がんだと分かってからは経験のあるお客さんとの間に入って一緒に話を聞いたり、情報を集めてくれたりしましたね。お店のお客さんは
30~50代の女性で人生経験豊富な方が多かったので、病院のアドバイス、胸を全摘するかしないか、卵子凍結するかしないかといった将来のプランニングなど、年上の女性の方に聞くことが多かったです。
島田:私はもう両親がいないので家族に相談できないこともあって、普段からよく友人に相談していました。同世代では不妊治療経験者やまさに今しているという子もいたので、卵子凍結にしても「可能性として残せるものは絶対残した方がいい!」といったような経験から来るアドバイスは、私自身も納得したところがありました。もちろん最終的にいろんな決断をするのは自分ですが、いろんな人の意見を聞いて、それによって自分が納得する決断を出すことができたと思いますね。
1992年、大分県生まれ。17歳で名古屋を拠点に活動するアイドルグループ・SKE48の第3期メンバーオーディションに合格しデビュー。2017年、グループ卒業。翌2018年1月、25歳で乳がんの告知を受け、左乳房全摘出・リンパ節切除。現在は「自身の体を知る」ことの重要性や、がんになっても夢を諦めない姿を伝えている。テレビやラジオ出演・ナレーション・MC・講演会の他、声優としても活躍中。
(島田 みゆ)
島田 みゆ(しまだ・みゆ)
1983年生まれ。社会人教育関係の会社で企画編集として11年勤めたのち、旅や食分野のライター、ヨガ講師、海外ツアーコンダクターの複業フリーランスに。コロナ禍で旅行の仕事が休業状態になり、好きな旅行ができないのであればと2022年からの海外生活を見据えていた矢先、38歳で乳がんが判明。3月に右胸全摘出手術を終え、現在も治療を続けながら、自身の経験を踏まえて多くの女性の心と体を健康に役立つ発信・活動をしたいと考えている。
ツイッター:@myuu_works
note:島田みゆ | 取材ライター×ヨガ講師×海外ツアコン