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タワマンの隣人が壁を叩いてくる原因は前の入居者 仲介業者に告知義務はない? プロが解説

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:姉帯 裕樹

隣室から壁を叩く音…前入居者が残したトラブルで散々な目に(写真はイメージ)【写真:写真AC】
隣室から壁を叩く音…前入居者が残したトラブルで散々な目に(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 できれば避けたい隣人トラブル。自分自身は気をつけて生活をしていたとしても、思いがけないことで巻き込まれてしまうことも。それはゴージャスなタワーマンションであっても例外ではないようです。新たな気持ちでタワマン生活を始めた夫婦。しかし、前の入居者が残した“置きトラブル”によって、心が休まらない暮らしを強いられているそうです。前入居者と近隣住民とのトラブルは、次の入居者に対する告知義務はないのでしょうか。東京・中目黒で「コレカライフ不動産」を営む不動産のプロ、姉帯裕樹さんが解説します。

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前の住人が残した“置き土産”ならぬ“置きトラブル”

 小林こずえさん(仮名・35歳)は、新型コロナウイルスが流行し始めた頃、東京都港区にある高級タワーマンションを中古で購入し、夫とともに入居。築浅で室内は手を入れる必要がないほどきれいだったため、リフォームにあまりお金をかけずに済みました。そのおかげで思っていたよりも安価で手に入れることができ、とても「お買い得だった」と感じていたといいます。

 幸先の良いスタートを切った新生活。しかし、その幸せはもろくも崩れ去ります。夜になると、隣の部屋から「ドン!」「ドガッ!」と、壁を叩く音が聞こえるようになったのです。

「その音が聞こえてくる時間帯に、我が家はとくに騒音を立てていないので、初めのうちは『何か重たいものを運んだり、掃除したりしているのかな?』という程度に考えていました。しかし、隣人が帰宅する午後8時頃になると、毎晩のようにドカドカと音がするんです。しかも、音は深夜まで不定期に続いていて……。あまりに気になったので管理人へ連絡を入れると、なぜ隣人が音を立てるのか、その理由が分かりました」

 それによると、どうやら前の入居者が隣人との間にトラブルを抱えていたとのこと。そのトラブルのきっかけや詳しい内容については分かりませんでしたが、前入居者はそのトラブルに嫌気が差し、引っ越しをしたようです。

「隣人に対し、住人が変わったことや騒音を出すのをやめてほしいことを管理人から伝えてもらいました。けれども、隣に住んでいるだけで気に入らないのか、騒音の頻度は少し減ったように思いますが、今でも週3日~5日くらいで壁を蹴る音が響き、ノイローゼになりそうなときがあります。相手の部屋と隣接する場所に台所とリビングがあるので、逃げようがないのも困りものなんですよね……。仲介してくれた不動産会社に夫が苦情を入れましたが、『告知義務が発生するほどのこととは認識していませんでした』と言われてしまって……」

隣人トラブルの告知義務は基本的にない

 今回もアドバイスをいただくのは、中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯さん。こうしたトラブルを避けるためにも、購入前に不動産会社から告知する義務などはないのでしょうか。

「ここまでこじれているのであれば、親切な業者であれば告知してくれるはずなのですが……。残念ながら、親切ではない業者に当たってしまったようです。ただしこの件について『告知義務はあるか?』と聞かれると、『ない』と答えざるを得ません」

 姉帯さんによると、不動産物件の告知事項(告知義務がある内容)は、事故物件や訳あり物件などと呼ばれる「心理的瑕疵」がある物件の場合や、建物が地震や火災など災害の影響から受けたダメージがあり、かつそのダメージが未解消の状態である「物理的瑕疵」がある場合。また、法律により建物そのものに使用制限がかかっている「法的瑕疵」などがある場合に発生します。

 このような瑕疵が発生している物件の場合は、重要事項説明書に記載し、購入希望者に物件説明の義務が生じます。しかし、今回のような「前入居者と隣人とのトラブル」の場合はその義務がないため、不動産会社の“優しさ”次第になるそう。こずえさんたちはすでに住んでおり、民事トラブルとなるため当事者同士で解決する以外に方法はないといいます。

「ちなみに僕自身も、下の階とトラブルになったのが原因で前入居者が退去したという部屋に住んだことがあります。僕の場合は事前に情報を知っていたので、菓子折りを持ってあらかじめ下の階の住人にあいさつしに行くことができました。そのおかげで前入居者に引き続いてのトラブルは回避することができたんです。一切揉めることもなく、むしろ仲良くなることができました」

 姉帯さんは自身のこうした経験も踏まえ、引っ越し時にはたとえ手間だと思っても、両隣や上下の部屋へのあいさつをしておくことをおすすめしています。一人暮らしなど、防犯上の理由であいさつを控える場合もあると思いますが、とくに小さな子どもがいるなどの場合はひと言あいさつをしておくことでトラブルを回避しやすくなります。

(和栗 恵)

姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)

「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。