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和食に欠かせない調味料の「さしすせそ」 塩より先に砂糖を入れる理由とは【お料理1年生のためのレシピ用語】

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

「さしすせそ」の調味料(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「さしすせそ」の調味料(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 この春、新生活で自炊に挑戦する人もいるかと思います。レシピ本を見て、知っているような簡単な言葉でも、実際にやってみると具体的な工程がわからないこともあるかもしれません。たとえば和食を作る際に、味付けは料理の「さしすせそ」と表現されることがあります。どんな意味なのでしょうか? 料理初心者に限らず、お料理好きな方も知っているようで意外に知らないレシピ用語。元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんが解説します。

 ◇ ◇ ◇

「さしすせそ」はなんの調味料?

 料理の「さしすせそ」は、和食に欠かせない調味料の頭文字を取ったものです。それぞれ何を意味するのかを紹介します。

○「さ」は砂糖
 砂糖は水分を保つ性質を持ち、食材をやわらかくする働きもあります。国内でもっとも使われているのは上白糖です。このほか、純度が高いグラニュー糖、風味やコクがある黒糖、自然な味わいのきび砂糖などがあります。

○「し」は塩
 塩は味を付けたり、旨味を引き出したりして、味を調える役割があります。また水分や臭み、ぬめりなどを取る働きがあるので、下ごしらえなどに使うことも。作り方で精製塩、天然塩に分けられます。

○「す」は酢
 酢は、酸味で料理をさっぱりさせたいときや、塩味をやわらげたいときなどに使います。殺菌効果や魚の臭みを取る働きも。米や大麦を発酵させて作った穀物酢、果実を発酵させて作った果実酢などがあります。

○「せ」はしょうゆ
 しょうゆは、昔は「せいゆ」や「せうゆ」と書いたことから「せ」となります。旨味やコクがあり、料理に深みを出したいときに加え、色付けや香り付けに用いられることも。濃口、薄口などがあり、色、塩分濃度や味わいが異なります。

○「そ」はみそ
 みそは、旨味と塩味を料理にプラスします。臭みや水分を取る働きもあるので、ほかの調味料と同様に漬けて保存期間を長くすることも可能です。日本各地には独自のみそがあり、米みそ、豆みそ、麦みそなどが料理に用いられます。合わせみそは、複数のみそを合わせたものです。

「さしすせそ」は味付けの順番のヒント

 調味料の「さしすせそ」は、煮物などを作る際の味付けの順番としても知られています。甘味から先に付け、塩味は何度かに分けて徐々に染み込ませるのが煮物などの煮付けの基本です。

 その理由は、砂糖の分子が大きく、食材に染み込むのに時間がかかるからです。塩は分子が小さく、砂糖より先に加えてしまうと分子の大きい砂糖が入る隙間がなくなってしまい、食材に甘味が入りにくくなります。また、砂糖を先に入れておくと食材に味が染み込みやすくなる効果も。

 その後に、香りがある酢、しょうゆ、みその順に加えていきます。みそを加えてからグツグツと煮立てると、香りや風味が損なわれてしまうので、仕上げに入れたら沸騰する直前に火を止めましょう。

「さしすせそ」には入っていませんが、和食作りに欠かせない調味料に「酒」と「本みりん」があります。これらはアルコールを含み、煮崩れを防ぎ、食材の旨味を引き出します。砂糖を入れる前に加え、アルコールを飛ばしましょう。「みりん風調味料」の場合は、風味付けとして用いるので最後のタイミングで加えます。

 ただし、料理の「さしすせそ」は一般的な味付けの順番で、すべての料理がこの順番通りではありません。作る料理により順番が変わることもあります。料理に合わせた味付けで食事を楽しみましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾