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イクラはカロリーが高くてプリン体も多い? 栄養士が解説する栄養と注意点とは
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教えてくれた人:和漢 歩実
濃厚な旨みと食感がおいしいイクラ。寿司やどんぶりの具などとして、幅広い年代に人気です。魚卵なので「カロリーやコレステロール、プリン体が多い」イメージもありますが、実際のところはどうなのでしょうか? イクラの栄養について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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そもそもイクラはなんの卵? 筋子との違いは
イクラも筋子も、同じサケ・マスの魚の卵です。違いは「見た目の状態」。卵が卵巣膜に入ったままつながっているものを「筋子」、卵を一粒ずつばらしたものを「イクラ」と呼びます。
通常、魚のお腹から取り出したばかりの状態は「生筋子」と呼ばれ、秋に出回ります。生筋子から作る自家製イクラのしょうゆ漬けは絶品です。一般にいう筋子は、塩漬けなどに加工されて店頭に並びます。イクラは、生筋子の薄皮を取って一粒ずつをほぐしてバラバラになった状態のもので、秋鮭の卵を指すのが一般的です。塩やしょうゆ漬けに加工されて、通年出回るイクラですが、秋鮭が水揚げされる9~11月がもっともおいしい季節。マスの卵である「マスコ」もイクラと呼ぶことがありますが、やや価格が安く、粒も小さいのが特徴です。
イクラの名はロシア語に由来し、「小さくて粒々のもの」「魚の卵」を指す言葉。ロシアには「黒いイクラ」とも呼ばれるチョウザメの卵、キャビアがあります。日本では赤いサケ科の魚卵が人気になり、サケやマスの卵だけがイクラと呼ばれるようになりました。
イクラの栄養とは 痛風にNGなプリン体は多い?
イクラの赤い色の正体は、カロテノイド系色素のアスタキサンチンで、エビやカニ、シャケにもエビやカニ、シャケにも含まれています。増えすぎた活性酸素の働きを抑制するなどの強力な抗酸化作用があり、美肌や生活習慣病予防効果が期待できる成分。
イクラは、体の構成に欠かせないたんぱく質のほか、イワシやサバなどの青魚で有名なオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富です。とくにDHAは脳の活性化、EPAは血液サラサラ効果や血栓予防が期待できます。
このほか、目の健康や免疫機能の向上に役立つビタミンA、カルシウム吸収の促進が期待されるビタミンD、老化防止に良いビタミンEを含みます。また、貧血予防の鉄、カルシウム、マグネシウムなどミネラルの栄養成分も。
魚卵というと、痛風にNGとされるプリン体をたっぷり含むイメージがありますが、イクラは多くありません。「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では、食品のプリン体の含有量を「極めて多い」「多い」「中程度」「少ない」「極めて少ない」の5つに分類。そのなかで、イクラは「極めて少ない」に分類されています。
エネルギーについては低カロリーとは言えず、コレステロールも少なくはありません。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、イクラ100グラムあたりのエネルギーは252キロカロリーで、コレステロールは480ミリグラムです。ちなみに以前「コレステロールが高い」といわれていた鶏卵は、100グラム(生、2個相当)で142キロカロリー、コレステロールが370ミリグラム。イクラのほうがカロリーもコレステロールも高いのです。気になる人は食べすぎに気をつけましょう。
イクラを食べる際は、塩やしょうゆ漬けされているため塩分のとりすぎに注意が必要です。しかし、イクラ丼などは毎日食べるものではありません。高血圧や腎臓病などの持病がなく、健康体の人であるならば、たまに「ぜいたく日」があっても良いでしょう。翌日は塩分を控えるなど意識して、1日単位ではなく1週間単位で栄養のバランスを考えて食べることをおすすめします。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾