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産後のお祝い膳でビール提供 赤ちゃんへの影響は? 驚きの声も… 産婦人科専門医に聞く注意点

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

産院の食事(写真はイメージ)【写真:写真AC】
産院の食事(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 産院のお祝い膳でビールが出てきた。こんな投稿が先月、SNS上で話題になりました。「母乳は大丈夫なのですか?」とママたちは騒然となりましたが、実際に入院中にアルコール類を提供する産院は複数存在します。一方で、産院によって指導の方針が異なるため、賛否両論があることも事実です。産後のアルコール摂取についての疑問や注意事項を産婦人科専門医に聞きました。

 ◇ ◇ ◇

“産後の1杯”に賛否両論

 妊娠中は胎児への影響から、長期にわたって禁酒しているママたち。無事に出産を終えた後、入院中の産院でビールが出てきたら、さぞ格別な1杯になることでしょう。

 話題になった投稿も、そんな歓喜の声にあふれていました。ビールのほかに、ワインやサワーも選択肢にあったそうです。

 SNS上の反応は、「まじですか!」「なんと素敵な病院!」「これは超お楽しみですね」「産院で酒はすげえ」など好意的な声が続々。一方で、産後、すぐに赤ちゃんへの授乳が始まるため、「母乳は大丈夫なのですか?」「出始めの母乳はすごい大事なのに」「完ミなら良いのか!」などの受け止めも見られました。

 ネット上で検索すると、確かにアルコール類を提供する産院は複数、存在することが分かります。飲酒が可能な理由は丁寧に説明されており、「少量を嗜む程度なら問題ない」と主張。飲むことが大好きなママの中には、わざわざ、それを目的に産院を選ぶ人もいるようです。ワインならワイングラス半分程度、またひと口ワインを提供するところもあるなど、待ちわびた出産の喜びを、少しでもママに味わってほしいとの思いが込められています。

 賛否両論もある“産後の1杯”。実際、お祝い膳でアルコール飲料を飲むことに問題はないのでしょうか。

 和歌山の産婦人科・森女性クリニックの森久仁子院長は、「授乳中も飲酒はしないほうが赤ちゃんのためには安全ですが、これ以上は飲まないなど自制ができ、授乳までには飲酒後2~3時間以上あけることができるように医療関係者が管理できれば、産後のお祝い膳として息抜きのアルコール摂取は問題ないと思います」との見方を示しました。

 間隔を空けるのは、「母体血中のアルコールは母乳に移行します。ただし蓄積されるものではなく、乳汁中アルコール濃度は飲酒後2時間をピークに低下していきます」というアルコールの特徴があるからです。

 森院長によると、アルコールの分解速度は平均値で1時間あたり約5.0~6.5グラム。アルコール度数5%の缶ビール360ミリリットルを飲酒する場合、総アルコールは14.4グラムのため、「分解するには2~3時間必要」となります。これは、アルコール度数12%のワイン150ミリリットルやアルコール度数40%のウイスキー45ミリリットルを飲んだ場合と同じです。産後のお祝い膳は、アルコールの量も限られるため、理論上は条件つきで母乳への影響を排除することができます。

 ただし、森院長は自身のクリニックでは妊婦から相談を受けてもよほどのことがない限り、産後の飲酒は勧めていないと言います。アルコールの分解速度には個人差があることや出産後の体調や妊娠期間中の禁酒による影響など、予想できない不安要素があることがその理由です。

「アルコール分解スピードは体重×0.1グラム程度/時間とされていますが、習慣的な飲酒者であればスピードが速くなり、習慣的な飲酒がなければ、遅くなります。また体調によっても変わります。妊娠中は飲酒をしていないため、産後は分解スピードが遅いことが予想されます」と、指摘しました。

 禁酒の期間が長期に渡っていた反動で、アルコールの回りが早くなったり、逆に酔いが続いてしまうことも考えられます。「分解スピードが遅ければ、赤ちゃんに対する影響はゼロとは言いがたいため、やはり授乳中に飲酒はしないほうが赤ちゃんのためには安全です」と付け加えました。

飲酒解禁の適切なタイミングは?

 また、頭では理解したとしても、すべてのママが必ずしも自制できるとは限りません。「アルコールを過剰に摂取したお母さんの母乳を飲んだ赤ちゃんには、傾眠や筋肉低下、成長障害が認められています」と、リスクについて訴えます。完母でなければ、飲酒時のみミルクに切り替える方法もありますが、さまざまな状況を考慮しているからこそ、安全策を取って指導している産院が多い可能性を挙げました。

 では、アルコールが好きなママは、産後どのようなタイミングなら飲酒してもOKなのでしょうか。よく言われる飲酒を解禁するタイミングとしては、赤ちゃんの卒乳時が挙げられます。母乳を与えなくなれば、確かに思い切って、酒を飲むことはできそうです。

 ただ、森院長は、子どもが幼いうちは、万一に備えて気兼ねなく飲むことには慎重になったほうがいいとの考えを示しました。

「卒乳したら直接的な子どもへの影響はありません。しかし、6歳までの子ども(小学校に入学前の未就学児)は予期しない事故が起こりやすいため、お母さんは家の中でも子どもから目が離せません。飲酒すると判断力がいつもよりも低下するため、いつもできている育児が完璧にできない可能性があります。安心して飲酒を楽しみたい時は、誰かに育児をサポートしてもらいましょう」とアドバイスしました。

◇森久仁子(もり・くにこ)
和歌山生まれ。1999年、大阪医科大学卒業。日本産科婦人科学会専門医。大阪医科大学付属病院、和歌山労災病院産婦人科などを経て、2013年、和歌山市に森女性クリニックを開院。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)