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猛烈に進むキャッシュレス デジタル化先進国の韓国で暮らす日本人が感じたメリット 日本との違いとは
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インターネットは単なる手段 韓国がキャッシュレス化を推進する理由
コロナ禍におけるワクチン接種の際、日本ではデジタル化に慣れていない一部の層で混乱がありましたが、「韓国ではワクチン接種の予約、当日の接種受付、ワクチン接種証明書の発行まで、すべてがデジタル化されていてわかりやすく、韓国人と外国人の区別もなかったので、ストレスがありませんでした」と大國さんは振り返ります。
さらに、引っ越しに伴う住所変更の手続きもオンラインで終了するといいます。
「外国人居住者が引っ越しする場合、『Hi! KOREA』というサイトで移転の申告ができるので、区役所に行く必要はありません」
地下鉄やバスなどの交通費についても、「交通系決済機能付きのクレジットカードを改札機のセンサーにかざせば通過できますし、交通費は1か月分まとめて請求され、引き落とされます。ちなみに運転免許証もモバイル化されていて、スマホで提示できます」。
韓国の行政が、これほどまでにキャッシュレス化を推進する理由はなんでしょうか?
「クレジットカードだけではなく、デビットカードも現金も控除対象になると言いましたが、自営業者の脱税防止が目的だと聞きました」
しかし、ここまでキャッシュレス化が進むと、人と人がふれあう機会が失われていくようなことはないのでしょうか? 大國さんは「そうでもありません」と言います。
「ピザやお弁当、お惣菜からトイレタリーなどの日用品までネットの宅配で注文する人が多いですが、コロナ以降、ほとんどは『置き配』といって配達員が玄関先に品物を置いて帰ります。これは郵便局の配達員のケースですが、私がたまたま留守にしていたとき、品物が玄関先にそのまま置かれているのに気づいた配達員が、部屋の大家さんに『居住者の不在が続いているようですが、大丈夫ですか?』と連絡してくれたようでした。心配した大家さんから安否確認の電話があって少しびっくりしましたが、人と人のつながりは案外しっかりとしています」
インターネットはあくまでも効率を良くするための手段という認識で、人とのふれあいがなくなるわけではないようです。
日本の進む未来 先を行く韓国の超キャッシュレス社会
最後に、「超キャッシュレス社会」の感想を聞いてみました。
「病院に行くと保険証と診察券、車を運転するときは免許証、地元の商店街に行くと現金……。日本ではバラバラになっているため、財布にしまうカード類が増える一方ですが、韓国は真逆で、デジタル化やキャッシュレス化のおかげでこまごまとした手荷物が減るので楽です。買い物に出かける際は、買い物用のデビットカード、交通用のクレジットカード、身分証、あとは身の回りの小物。最低限これだけで済むので本当に身軽です」
そうなると、大量の個人情報が詰まったスマホやカード類を紛失した場合、大変なことになるのではないか……と心配になりますが、実際のところはどうなのでしょうか?
「確かに紛失すると大変なことになります。というか面倒ですし、スマホをなくすと地獄ですね。カードは銀行に電話して利用を停止し、再発行する手続きは日本と同じです。韓国はある意味、監視社会なので、街中にCCTV(防犯カメラ)があり、カード履歴もすぐにわかるので、他人のカードを盗んでもほぼ利用できないといわれていますし、すぐに摘発されるはずです。スマホを落としたら、本人は一連の手続きが地獄ですが、パスワードや本人認証を経ないと使えないものがほとんどなので、すぐに誰かに使われてしまうということは意外と少ないと思います。もちろんプロに情報を盗まれたら別ですが……」
経済産業省の調査によると、キャッシュレス化の国際ランキング(2018年)は、韓国が94.7%と世界1位であるのに対し、日本は29.7%にとどまっています。60%の中国ではQR決済が主流で、48.9%のスウェーデンではデビットカードが主流と、国や地域によって主な決済方法は異なっているのが現状です。
日本政府は2025年に4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしていますが、病院の診察券も財布も持ち歩かなくて済む社会は、日本ではなかなか想像できないかもしれません。
(鄭 孝俊)
鄭 孝俊(てい・こうしゅん)
元全国紙記者。在職中に東京大学大学院に入学し、仕事の傍ら研究生活に入る。文化人類学やメディア論に関心を持ち、韓国エンターテインメントとファン行動について論文を執筆。専攻は日韓メディア比較論。日本や韓国だけではなく、東南アジアの伝統芸能や食生活にも関心を寄せている。