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「あの味には勝てない…」 プロ選手になった今でも自分でも作る“おふくろの味”

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

練習中の埼玉西武ライオンズ・佐藤龍世選手【写真提供:埼玉西武ライオンズ】
練習中の埼玉西武ライオンズ・佐藤龍世選手【写真提供:埼玉西武ライオンズ】

 プロスポーツ選手として活躍する頑強な体を作り上げた“おふくろの味”とは、どのようなものなのでしょうか。埼玉西武ライオンズのプロ5年目・佐藤龍世選手には、里帰りの際に毎回必ず食べるという母特製カレーがあるそうです。忙しい合間を縫って、母直伝のレシピを自身で再現することも多いというほどの大好物。現オリックス・バファローズの森友哉選手をも虜にしたという、おいしさの秘密に迫りました。

 ◇ ◇ ◇

“おふくろの味”は「“お母”が作った甘いカレー」

 佐藤選手が生まれ育ったのは、北海道厚岸郡厚岸町。カキで有名な町です。けがでプロ野球選手への道を断念したという父親はカキ漁師。新鮮な魚介類が目の前にたくさんある環境で育ちましたが、「僕が一番好きな食べ物はカレーですね。それも、“お母”(おかあ)が作るカレーが好きです」と明かします。

 そんな佐藤家のカレーには、ちょっとした特徴が。

「甘いんですよ。具はジャガイモ、ニンジン、あとはひき肉です。そこに砂糖が入っているんです。なぜ甘いのかはわかりません。生まれたときから食べているので(笑)」

 今時はスパイスで作る本格カレーや、辛さ○倍など香りや辛さを売りにしたカレーが人気ですが、佐藤選手は子どもの頃から母・かおりさんが作る甘いカレーが好きだといいます。実家を離れ、札幌市内にある北海高校へ進学した高校時代には、下宿先にその特製カレーをよく送ってもらっていたそうです。

「普段は甘いものが好きじゃないんです。お菓子とかも食べないですし。でも、カレーだけは“甘党”なんですよ」

「それなら自分で作ろう」と“料理男子”に 先輩も「龍世が作るカレー」が好物に

 高校卒業後は岩手県花巻市にある富士大学へ。寮生活ではなかなか食事が口に合わず、鍛えていた体がどんどん痩せていったといいます。それがきっかけとなり、大学2年生になると「それなら自分で作ろう」と“料理男子”として目覚めたのだとか。

 母からレシピを聞き、カレーも再現するようになりました。そこには少々こだわりもあり、「市販のルーを使うんですけど2つ、3つ、違う種類のルーを混ぜるとおいしいんです」と主婦顔負けです。

 もちろん「作る量によって違いますが、味をみながら砂糖を入れています」と“佐藤家のカレー”をふるまってきたそう。味の評価も「みんな花丸でした」と自信満々です。

 プロ入りしてからも「カレーは家で食べるもの」という思いは変わらず、あまり外でカレーを食べないそう。そのため「あまり多くはないけど、月に1度くらいは今でも自宅で作ります。カレーには自信があるんです」と、大学時代に始めた料理は今でも継続中なのだとか。

 そのおいしさを絶賛してくれたのが、昨シーズンまで埼玉西武ライオンズに在籍していた森友哉選手です(今シーズンからオリックス・バファローズにフリーエージェント移籍)。

「森さんは僕のカレーが『一番好きだ』って言っていました。本当かどうかはわかりませんけど、好きな食べ物を聞かれたら『龍世が作るカレー』って答えていましたから」

 入団時からお世話になってきた先輩は、誰よりも佐藤選手のカレーのファンだったようです。

 そんな佐藤選手は毎年、昨年の帰省の際に両親へ贈り物をするそう。昨年は「欲しいといっていたので」と、母からリクエストされたバッグをプレゼントしたといいます。「“お母”にはもちろん感謝しています。ただ、言葉で言うのはちょっと恥ずかしいから……」と少しはにかみながら話す表情に、佐藤選手の優しい人柄があふれていました。

◇佐藤龍世(さとう・りゅうせい)
1997年1月15日、北海道厚岸郡厚岸町生まれ。内野手(二塁、三塁、捕手)、背番号58。高校時代には甲子園出場の夢は叶わなかったものの、北東北リーグの富士大学では3年の春に首位打者、最多本塁打、同秋は最多打点を記録。2018年のドラフト7位で埼玉西武ライオンズに指名を受けた。2019年には開幕一軍スタートを切り、2021年8月に北海道日本ハムファイターズにトレード移籍したが、翌年11月には西武に復帰した。2023年は自己最多となる91試合に出場。打率.263、3本塁打、16打点と、いずれも個人最高記録を残している。

(芳賀 宏)