カルチャー
斎藤佑樹「なぜ自分は幸せな野球人生を送れたのか」 幼児教育に興味を抱いた理由とは
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元プロ野球選手の斎藤佑樹さんは、子ども時代からの野球人生についてある疑問を抱いています。それは「なぜ自分は幸せな野球人生を送れたのか」ということ。そこで関心は幼児教育の重要性に向かっていったそうです。あらゆる分野で自分らしく活動する人たちが、生き方のヒントを得た本について語るこの連載。今回は上皇陛下の幼少時に教育係を務め、幼児教育の改革に尽力した倉橋惣三さんの物語です。常識にとらわれない倉橋さんの姿は、斎藤さんの恩師・栗山英樹さんを想起させるのだとか。
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野球で出会った指導者の方々から影響を受け…幼児教育に関心
“近代幼児教育の父”と呼ばれる教育者であり、上皇陛下の幼少時に教育係でもあった倉橋惣三さんの生涯を綴った「倉橋惣三物語 上皇さまの教育係」(講談社刊)です。読んだきっかけは、僕自身が教育にすごく興味を持っているから。
特に幼児教育に対して興味を持ったのは、「三つ子の魂百まで」といった言葉があるように、幼児期の教育がその後の人物形成に及ぼす影響が大きいという「ペリー幼児教育計画」などのプロジェクトの結果を読んだからです。
ペリー幼児教育計画とは、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン教授が1960年代に行ったプロジェクトです。対象となった児童に特定の教育プログラムを受けさせ、14歳、15歳、19歳、27歳、40歳と、約40年にわたってIQ、高校卒業率、犯罪率、収入、既婚率などを検証し、米国に対してどれだけ貢献したかを調べています。
結果、圧倒的にきちんとした幼児教育を受けることの優位性が分かりました。幼児教育にはモンテッソーリ教育やシュタイナー教育などいろいろありますが、それぞれの理念を聞くにつけ、そこに何か大切なヒントがあるのではないのかと思うようになりました。
また、幼児教育に興味がある理由には、自分自身が育ってきた環境に恩返しをしたいからという思いもあります。そのベースは「なぜ自分はこんなに幸せな野球人生を送れたのだろう。送らせてもらえたんだろう」という理由です。
親に聞くと“美談”しか語ってくれない(笑)。「佑樹は努力してプロ野球選手になった」と良いことしか言ってくれないんですが、でも本当はそれだけじゃないと思っています。その答え合わせをするために、いろいろな方に話を聞き、本を読もうと思った中で、この本を薦めてくださった方がいたんです。
学生時代も興味はありましたし、大学も教育学部でしたけれど、社会学を専攻していたので……。むしろ今、教育に興味を持つようになったのは、野球をやる環境で出会った指導者の方々の影響だと思います。
それぞれ指導法は違いますが、皆さん本当にすごい人たちばかり。「絶対皆さんに共通することがあるはずだ」と思い、いつか自分が人に教えることがあるかもしれないし、それを実践するためにはちゃんと勉強したいと思い至ったわけです。