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「本マグロ」と呼ばれるのは何マグロ? いまさら聞けない豆知識を栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実
マグロは日本人に人気がある魚のひとつ。刺身や寿司ネタなどで、子どもから高齢者まで幅広い年代から親しまれています。ひとくちにマグロといっても、「本マグロ」と呼ばれる高級品や、比較的手頃な価格で食べられる「メバチマグロ」など種類があるほか、どんな栄養が含まれているのか、あまり意識せずに食べていることも。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに、マグロについて伺いました。
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マグロの名の由来や栄養 脂身に多いDHA
寿司ネタや刺身などで人気のマグロ。名の由来には諸説あります。目が黒いことから「目黒(マグロ)」と呼んだという説、黒い背のマグロが泳いでいる姿を船の上から見ると、真っ黒な山のように見えたことから「真黒(マグロ)」と呼んだという説などです。
代表的なマグロの栄養成分としてはほかの魚類と同様、人の体を構成するのに欠かせないたんぱく質をはじめ、脳の活性化が期待されるDHA(ドコサヘキサエン酸)や、血液をサラサラにして動脈硬化など生活習慣病の予防で注目されるEPA(エイコサペンタエン酸)の不飽和脂肪酸が挙げられます。このほか、体内の余分な塩分を排出するカリウム、貧血の人にはうれしい鉄、カルシウムの吸収を助けるビタミンDなどを含む食材です。
マグロは背中側の赤身と腹側の脂身(トロ)に大別され、部位によって栄養価が異なります。一般的に赤身は脂質が少ないためカロリーが低く、水分やカリウム、マグネシウム、リンを多く含む特徴が。一方、脂身(トロ)は脂質が多い分カロリーは高くなっていますが、EPAやDHAが豊富。とくにマグロの脂身のDHAは、魚のなかでもトップクラスです。
なじみのあるマグロは大きく分けると5種類
マグロとひとくちにいっても、さまざまな種類が。食用でなじみがあるマグロは、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロなど主に5種類が挙げられます。ただし、店頭で「本マグロ」と表示されるのはクロマグロだけです。それぞれの特徴を紹介しましょう。
○クロマグロ
「本マグロ」と呼ばれるマグロの王様。マグロのなかでもとくに大きな種類で、体長3メートル近くになる高級魚です。刺身や寿司ネタにして食べられます。EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富です。
○ミナミマグロ
別名「インドマグロ」。名の由来は、南半球に生息していることからです。そのため、日本近海ではとることができず、輸入や遠洋漁業によって水揚げされています。体長はクロマグロより小さめ。濃厚な味わいが特徴で、クロマグロに次ぐ高級魚です。貧血が気になる人にはうれしい鉄が多く含まれています。
○メバチマグロ
目がパッチリ大きいことが名の由来で、「バチマグロ」と呼ばれることもあります。手頃な価格で店頭に並ぶことが多い種類で、回転寿司のネタや刺身にも。クロマグロやミナミマグロと比べると、脂質が少なく赤身が多いのが特徴です。クロマグロに次ぎ、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多め。
○キハダマグロ
体の側面や尾ビレ、背ビレが黄色いことが名の由来。体長はミナミマグロやメバチマグロと同じく中型種に分類されますが、身が細いので小ぶりに見えることもあります。味わいがあっさりとしているため、刺身のほか、缶詰に加工されることも。カリウムや鉄が豊富です。
○ビンチョウ(ビンナガ)マグロ
ほかのマグロと比べて体が小さく、胸ビレが長いのが特徴。身は薄いピンク色でやわらかく、高級ツナ缶に加工されるほか、現在はコンビニエンスストアや回転寿司店で使われることも多いです。「ビントロ」という名で呼ばれることもありますが、実際は脂身部分のトロではありません。カルシウムの吸収を助けるビタミンDが豊富。
マグロは、生のまま刺身で食べると加熱に弱い栄養成分も摂取しやすいでしょう。ただし、どのマグロも脂身の部分(トロ)は、赤身と比べるとエネルギーが高めになります。たとえば、天然クロマグロ100グラムのエネルギーをみると、赤身が115キロカロリー、脂身が308キロカロリーです。5切れくらいを目安に、食べすぎや胃もたれに注意しましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾