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「父の財産に相続税がかかるなんて…」 税務署から突然の通知 対処法を税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

税務署から突然「相続税についてのお知らせ」が届き、途方に暮れてしまうことに…(写真はイメージ)【写真:写真AC】
税務署から突然「相続税についてのお知らせ」が届き、途方に暮れてしまうことに…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 家族が亡くなってしばらくしてから突然、税務署から「相続税についてのお知らせ」あるいは「相続税の申告等についてのご案内」という封書が届くことがあります。これはいったい何なのでしょうか。豊富な実務経験がある税理士で、マネージャーナリストの板倉京さんが解説します。

 ◇ ◇ ◇

長野の実家へ久々に帰ったら驚きの封書が

 相談者の小林里香さん(48歳・仮名)が相談に来たのは、父親が亡くなってから7か月ほどがたった頃のことでした。

「先日、片付けのために久しぶりに長野の実家に戻ってみたら、ポストに税務署からの書類が入っていたんです。中を見ると『相続税の申告等についてのご案内』と書かれた、なんだか難しい書類が入っていました。父の財産に相続税がかかるなんて思いもしなかったので、どうすればいいのかわからなくなってしまって……」

 相続税がかかりそうな人が亡くなると税務署から「相続税についてのお知らせ」あるいは「相続税の申告等についてのご案内」という書類が送られてきます。前者は相続税の申告が必要かもしれないと思われる家庭、後者は相続税がかかる可能性が高いと思われる家庭に送られます。

 なぜ、そんなことが税務署にわかるのか、ちょっと恐ろしい気がしますよね。

 実は、税務署は個人の不動産や売買状況、過去の年収・相続・贈与で受け取った財産などの情報をデータを「KSK(国税総合管理)システム」というシステムに集約しているといわれていて、これらのデータを元に相続税がかかりそうな家庭を把握しているというわけです。

 ちなみに、「相続税の申告等についてのご案内」の中には「相続税の申告要否検討表」という相続税がかかるかどうかを判定するためのシートが入っており、どのような財産をどのくらい持っているかを記入して返送します。これは「相続税の申告書」とは別物で義務はありませんが、そもそも税務署が「相続税の申告が必要だろう」と目星をつけて送ってきているものですから、無視をせずに回答しておいたほうがいいでしょう。すでに申告の準備を進めている場合は、回答しなくても問題はありません。

 里香さんは相続税なんてかからないと思っていたとのことでしたが、確認すると父親の遺産は相続税評価額で5000万円(自宅の評価約3000万円、預貯金約2000万円)ほどありました。相続税がかかるのは、法定相続人の数によって決められた基礎控除額を超えた場合です。

 里香さんの場合は、母親はすでに他界しており、弟さんと2人きょうだいなので、法定相続人は2人です。この場合は、4200万円超の遺産があると相続税がかかることになるので、支払うことになります。

相続税の申告書作成は想像以上に大変!

人数によって変動が…【画像:Hint-Pot編集部】
人数によって変動が…【画像:Hint-Pot編集部】

○相続税の基礎控除額

 里香さんのように、税務署から「相続税についてのお知らせ」や「相続税の申告等についてのご案内」が届いたことで、相続税がかかるかもしれないと初めて気づく人もいます。しかし、これらが届くのは、相続から6か月ほど経ってから。しかも、基本的に亡くなった人の住所に届くため、同居していない家族の場合は、書類が来たことに気がつかない可能性もあります。

 相続税の申告期限は、相続開始の翌日から10か月以内。この期限までに申告書を作成して、相続税を払わなければなりません。しかし、相続税の申告書を作るというのは、なかなか大変な作業です。まずは、亡くなった人のすべての財産を確認することからスタートするのですが、人ひとりの財産をすべて探し出すのは至難の業です。

 預金通帳や証券口座だって複数持っているケースが少なくありません。それに、生命保険やゴルフ会員権、書画骨董にいたるまで、とにかく現金換算できるものは、すべて相続財産です。

 最近では、ネット銀行やネット証券なども普及していて、パソコンが開けずに家族が探し出せないという可能性も……。土地や建物だって、しっかり調査して相続税の計算のための評価額を決める必要があります。

 また、里香さんのように相続人が複数いる場合は、誰がどの財産をもらうのかも申告期限までに決めて「遺産分割協議書」という書類を作成しなければいけません。里香さんにこの話をしたところ、「相続税の申告期限まで、あと3か月でそんなことをするなんて……。私も弟も仕事をしているし、私は東京、弟は大阪に住んでいて、実家は長野です。どうすればいいんだろう……」と頭を抱えていました。

 このときの申告はなんとか期限に間に合わせることができましたが、仮に期限内に申告できなかった場合は、「無申告加算税」というペナルティが課されます。「無申告加算税」は納付すべき税金の5~20%。それ以外に「延滞税」という利息のようなものがつきます。これが令和4年1月1日から令和6年12月31日までの期間は、年8.7%(最初の2か月のみ年2.4%)と高利貸し並みの利率なのです。

「我が家には大した財産がないから大丈夫!」とタカをくくっている人は、本当に相続税がかからないのかを、ぜひ今のうちから確認してほしいと思います。高い相続税を払った上に無用なペナルティまで課されることになれば、残された家族が大変な思いをすることになります。

(板倉 京)