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「妹が心配」と放棄求める親、全財産を要求する義姉 家族の本性があらわになる相続問題

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

早いうちから話し合っておくべき「遺産相続」(写真はイメージ)【写真:写真AC】
早いうちから話し合っておくべき「遺産相続」(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 主に両親や祖父母など、亡くなった人が残した財産を引き継ぐ「遺産相続」。預貯金、株券、小切手、現金などの他、家や土地、宝石、ゴルフの会員権、著作権、電話加入権といったさまざまなものが相続できる財産に含まれます。もちろん、プラスのものだけならいいのですが、住宅ローンなどの借金や未払いの税金など、負の遺産も少なくありません。そのためか相続は古くからさまざまな問題を引き起こし、家族間に亀裂を生んでしまうことも多々あるようです。こうした亀裂を避けるためには、早いうち(被相続人が生きているうち)から家族間で話し合いをしておくことが大切ですが、その話し合い自体が亀裂を生んでしまうことも……。

 ◇ ◇ ◇

喘息持ちの妹に全財産を譲ると言い出した両親

 関東地方在住の美空さん(仮名・44歳)はこの夏、大きな虚無感に襲われる出来事を体験しました。事の発端となったのは今から3年前、70歳になる父親が交通事故に遭い、介護が必要になったこと。美空さんの家から車で15分ほどの距離に住んでいる父親は寝たきり状態になり、母親から助けを求められ、仕事が終わったあとと週末を使って実家に通うようになりました。

「夫に相談した結果『できることはできるうちにやるべきだよ』と言ってもらい、夫がある程度家事を担当してくれることになりました。でも、土日は泊まりがけで実家に帰るため、家族の時間をほとんど持つことができなくなってしまったんです。それでも子どもたちは寂しいとも言わず『ママ、おじいちゃんのために頑張って! でも、疲れたら休んでいいんだよ!』と優しい言葉をかけてくれました」

 仕事が終わるとその足で実家に向かい、父親の体をホットタオルで拭き、ドライシャンプーで頭を洗い、汚れた洗濯物を洗って干す。それが終わると翌日分の食事を作り、冷蔵庫へ。母親がやってくれれば……と思う美空さんですが、実家には体の弱い妹がおり、母親はそちらにかかりっきり。結局、美空さんが動くしかなかったのだとか。

「妹はひどい喘息持ち。とはいえ医師からは普通に生活する分には問題ないと言われているんです。でも、病気を盾に何もやろうとしません。母も妹のことを口実にして、父親の世話を拒否している状態です。以前からそういう家族だったので仕方ないと割り切って面倒を見にいっているんですが……。実は先日、こんなことを両親から言われてしまって……」

 ある夜、美空さんが実家であれこれと家事をしていると、両親に「話がある」と呼ばれました。「ようやく介護施設に入居できるようになったのかな?」と美空さんは思いましたが、ご両親からの言葉は意外すぎるものでした。

「妹は体が弱くて将来が心配なので、家や財産はすべて妹に相続させると伝えられました。相続放棄に関する書類にサインするよう求められましたが、介護はこれまで通り私がやるよう言われたんですよ。『本気か!?』って、思わずツッコミを入れたくなりました」

 美空さんはとりあえず返事は保留にして帰宅し、夫に相談することに。すると、夫は美空さん以上に怒ってくれました。

「お金の問題じゃないけれど、夫から見ても妹を甘やかしすぎているから、『もう二度と行かなくていいと思う』と言ってくれました」

 夫の言葉で憑き物が落ちたように、両親への愛情や責任感が消えてしまったという美空さん。それからは実家に顔を出す頻度を抑え、週に1度程度にしたそう。すると、父親からは「金を渡さないと知った途端にその態度か!」と怒鳴られるのだとか。

「『あらそう。お父さんもそんな娘に介護なんてされたくないでしょ? 私も、ここに来ないで済んだ方が楽なんだけど?』って答えています。子どもの頃から妹ばかりがかわいがられていることは理解していましたが、まさかここまでとは。血のつながった相手でも、他人なんだなぁって思いました」

 母の負担が心配で完全には絶縁できずにいる美空さんですが、今後のことを考えると憂鬱な気持ちになるそうです。