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仙台の地元民が愛する冬定番グルメとは 元局アナが現地リポート
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春の七草に含まれる「セリ」。宮城県では冬から春にかけての「セリ鍋」が有名です。フリーアナウンサーたちが、バトンをつなぎながら日本の良さをリポートしていく連載「とっておき日本再発見」。今回は元テレビ朝日で活躍したフリーアナウンサーの日下千帆さんが、宮城県の県民食と言っても過言ではないセリ鍋を紹介します。
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仙台っ子に愛されるセリ鍋 鴨肉と合わせる理由とは
宮城県仙台市の名物と聞くと、牛タンや笹かまぼこを思い浮かべますが、実は冬のグルメの定番として知られるのはセリ鍋です。11月頃から2月頃にかけて、多くの居酒屋でメニューに取り入れています。
合わせるのは鶏肉のほかに、鴨肉も多いようです。その理由は、鴨は昔、セリを食べてしまう害鳥とされていて、鍋にあうので一緒に食べてしまえ、となったからだそう。
お店の方によると、仙台っ子は牛タンや笹かまはそれほど食べませんが、セリ鍋はお店でよく食べるそうです。満席の店内を見回すと、半数ほどのお客さんがセリ鍋を注文していました。
セリは高級食材 茎だけではなく根っこまで食べられる
セリ鍋は、茎だけでなく、根っこまで食べるのが特徴です。しかし、根っこまで食べるようになったのは、セリ鍋ブームが起きてからのここ20年ほどの話。ブームとなってからは、甘みがあって香りも良い根っこは奪い合いとなったそうです。
初めてセリ鍋を食べる方は、根に泥がついていそうで心配かもしれませんが、よく洗っているので、その点は大丈夫。セリの独特な香りと鴨肉を出汁にしたスープがよくあっています。
私が訪れたお店では、セリ鍋が2人前2000円でしたが、メニューを見るとセリのお代わりは1000円と書かれていました。セリがいかに高級野菜であるかがわかります。
仙台のお雑煮にも欠かせないセリは、年末になると3本100円という高値をつけることもあるそうです。いったいこの高級な野菜はどのように作られているのでしょうか。生産地を訪ねてみました。
セリの8割は名取市で生産 冬だけで1年分の収益にも
実は、宮城県のセリは、8割が名取市で生産されています。そこで、名取駅のロータリーに停まっていたタクシーの運転手さんにお願いして、セリ農家さんを紹介していただきました。
ドライバーさんによると、名取のセリは上余田と下余田の2つの地域で栽培されており、セリ農家は、冬だけで1年分の収益を売り上げるのだとか。稲作よりもはるかに利益が出るのですが、セリ農家の組合では水温16度以上のきれいな井戸水を使用するなど、厳しい決まりを課しているため、誰でもセリを栽培できるわけではないそうです。
ご紹介いただいたセリ農家の加藤良作さんが、セリの根っこから泥を洗い流す工程を見せてくれました。小屋のなかにセリ専用の洗い場が作られています。真冬に冷たい水でセリを洗い続けるのは、楽な作業ではありません。洗い終わったセリは100グラムずつ束にしてテープでとめ、出荷されていきます。
こうして、一本一本、愛情をかけて大切に栽培されているセリを見たら、しっかり味わって食べなくてはという気持ちになります。真冬にもかかわらず40センチ近くまで伸びた立派なセリから、加藤さんのセリづくりにかけるプライドを感じました。
「名取せり鍋」は、「ニッポン全国鍋グランプリ」で、2016年に優秀賞・審査員特別賞・協賛社賞の3冠を獲得する人気鍋。宮城県に来たら、カリウム、βカロテン、葉酸など、栄養価も高いセリ鍋をぜひ食べていただきたいですね。
(日下 千帆)
日下 千帆(くさか・ちほ)
1968年、東京都生まれ。成蹊大学法学部政治学科を卒業後、テレビ朝日入社。編成局アナウンス部に配属され、報道、情報、スポーツ、バラエティとすべてのジャンルの番組を担当。1997年の退社後は、フリーアナウンサーとして、番組のキャスター、イベント司会、ナレーターのほか、企業研修講師として活躍中。