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「ドラマとドキュメンタリーの融合」 旅行ガイドから生まれたドラマ「地球の歩き方」の裏側
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テレビや配信で、ドラマを観るのが好きな人は多いでしょう。たくさんのコンテンツがあるなか、筋書きがない旅行ガイドを原案にした異色の作品が登場。多くの人が知る同名の旅行ガイドを原案にしたドラマ「地球の歩き方」です。小説や漫画と違い、ストーリーのないガイドブックから、どんなドラマが作られているのでしょうか。「Hint-Pot」編集部では、全3回のインタビューを実施。初回は、ドラマ化の背景など、プロデュースを担当するテレビ大阪の岡本宏毅さんと、「地球の歩き方」編集長の宮田崇さんに、お話を伺いしました。
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以前から温めていた「海外の旅をテーマにしたドラマ作品」
旅が好きな芸能人たちが「地球の歩き方」編集部から、特集を組んでほしいと依頼を受け、現地へ旅立つことから始まる本作。韓国を三吉彩花さん、タイを森山未來さん、サイパンを松本まりかさん、ニュージーランドを森山直太朗さんが、それぞれ現地での取材を通じてオリジナル特集ページを完成させていきます。
プロデューサーの岡本さんによると、旅行ガイドを原作にドラマ作品を制作するという斬新な試みは、テレビ大阪で温めていた企画から生まれたといいます。
「ドラマに趣味の要素を加えたような作品……たとえばグルメですとか、建築巡り、サウナなど、趣味系のテーマを掲げたものを多く制作してきました。その一環で、“海外の旅をテーマにしたドラマ作品を”と考えていたんです。ところが、コロナ禍で一度、頓挫してしまいました。
その後、行動制限措置などが落ち着いて再チャレンジすることに。海外での撮影に強いテレコムスタッフさんと組んで企画を考えた際、『地球の歩き方』の実写版をご提案いただきました。さまざまなコラボレーションをされているので、“ダメ元”でお願いしたところ、了承いただいた形ですね」(岡本さん)
「地球の歩き方」の編集長・宮田さんは、実際にオファーを聞いたときの驚きを「何が起きているのか、ちょっとよくわからなかったですね(笑)」と振り返ります。旅行ガイドという特性から、過去にはクイズ番組などのオファーはありました。しかし、ドラマというのはイメージがつかめなかったそうです。
「どこまでがドラマで、どこまでがドキュメンタリーなのか…」
三吉彩花さんが主演した韓国編の第1話で、宮田さんは特集を依頼する打ち合わせシーンにも出演。撮影はスタジオではなく、実際の編集部で行われました。その際、ドラマのカット割りは用いず、ドキュメンタリーと同様1台のカメラで撮影したそうです。岡本さんをはじめ制作スタッフからは、「普段、打ち合わせしている通り、いつもと同じ感じで話してください」と言われたといいます。
「撮影にも参加しましたけど、第1話を観るまでは本当に何が行われているのか、よくわからない状態のままでしたね。放送を観て、どこまでがドラマで、どこまでがドキュメンタリーなのか……。すごく不思議な感じなのですが、そこが魅力だと思うし、“『地球の歩き方』がドラマになるというのは、こういうことなんだな”と実感しました」(宮田さん)
宮田さんの言葉に、「それが一番の狙いなので、そう感じてもらえたのは、とてもうれしいです!」と笑顔を見せた岡本さん。今回の作品は「ドラマとドキュメンタリーの融合」が大きなポイントだと語ります。
しかし、ストーリーのない旅行ガイドを実写ドラマにするというのは、かなり大変なこと。岡本さんたちドラマ制作チームは、どうやって筋書きのない「地球の歩き方」をドラマにできたのでしょうか。
「まずは『地球の歩き方』編集部にご協力いただき、ベテラン担当者の方6名に座談会をしてもらったんです。みなさんが長年、編集に携わられているなかでの苦労や失敗、どういう取材をして本を作っているのか、1からヒアリングした生の声をできる限り反映して、構成を考えました。
出演者が現地で出会う人との交流といったドキュメンタリーの部分もありつつ、ドラマパートには、編集者の方が経験したアクシデントなど、実際のエピソードを基にしたストーリーが織り込まれています。そのため、全体としては細かい台本は用意せず、感じたままを即興で演じてもらう手法も取り入れました。
また、ドキュメンタリーの側面があり、交流する人や現地で感じたことで、演者は感情を動かされます。そこから演技が変化するのをドラマに反映させたいと考え、脚本やセリフを決め込まず、現場でセッションのように撮影するのを重視した点が大きいですね」(岡本さん)