健康・美
爪切りは家族で共有NG 洗面所の手拭きタオルも 家庭内感染を防ぐには 内科医が解説
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教えてくれた人:佐藤 留美
家族で暮らしていると、服やパソコンなどさまざまなものを共有し、助け合いながら生活していると思います。しかし、なかには共有すると、家庭内感染のリスクが上昇してしまうアイテムも……。家族の誰かが体調を崩したときに慌てないよう、普段からひとりひとり分けておいたほうが安心です。まだまだ寒い日が続き、ノロウイルスなど感染力が強い感染症が気になる季節。そこで、内科医の佐藤留美医師が解説します。
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バスタオル使用後は毎回の洗濯が理想
新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染経路で多いのは、家庭内感染です。近距離での会話を避けたり、同じ皿や鍋の料理を食べないようにしたりするなど、予防に気をつけているという人もいるかもしれません。
しかし、家族間で感染しやすい原因は、これだけではありません。無意識に共有しているものが、思わぬ病気につながることがあります。
まずは、バスタオルです。たとえば、今冬季節外れの流行が続いた咽頭結膜熱(アデノウイルス)を発症したときは、バスタオルの共有を避けたほうがいいといわれています。その理由は、家族の誰かが感染している場合、そのタオルをほかの人が使用してしまうと、ウイルスが手や顔に付着し、感染症を引き起こす場合があるから。
つまり、バスタオルの共有をやめることで、接触感染による疾患の予防につながります。これはウイルスだけでなく、細菌も同様です。
使用後に干してしっかり乾せば、ウイルスも死滅するのでは? と思う人もいるでしょうが、使用後のバスタオルは放置しておくと細菌が増殖します。とくに、乾ききらず濡れた状態では、細菌が活発的に繁殖しています。たとえ干したとしても、共有するのは避けましょう。1回使用するたびにその都度、洗濯することが理想的です。
もちろん、トイレや洗面所などに吊るした手拭きタオルも同様です。家族ひとりひとりに専用のタオルを用意するか、ペーパータオルなどを利用するといいでしょう。
刃物である爪切りはひとりひとり専用に
次に、気をつけたいのは刃物類。とくに爪切りは、家族の人数分揃えて専用で使っているという家庭は、あまり多くないかもしれません。爪切りも刃物なので、爪や指先を傷つけてしまうことがあり、ほかの人と共有していると血流感染するリスクが高まります。また、爪白癬(いわゆる水虫)が伝播することも。
爪切りは共有しないのがベストですが、管理が難しいなど、どうしても共有しないといけない場合はアルコール消毒を行いましょう。 最低10分間はアルコールに爪切りを浸すこと、もしくはアルコールで2度拭きすることをしてください。
また、カミソリの共有ももちろんNGです。顔などに付着している細菌やウイルスを伝播することになりますし、爪切り同様に刃物なので、使用した際に顔の皮膚を傷つけて出血することがあります。また、人が使っているカミソリは使用期間がわからないため、古くて切れ味が鈍っている刃だった場合、カミソリまけや炎症の原因になることも。
小型のフェイスシェーバーや、電気シェーバーは持ち運びしやすいため、出先で忘れた人から貸してほしいと頼まれることもあるかもしれません。しかし、感染予防の観点からは、貸し借りするのは絶対にやめましょう。
気軽に貸し借りがちなハンドクリームにも注意
この時季に大活躍する、缶入りのハンドクリームなどの保湿グッズ。指を入れて取るタイプも多いですよね。家族に限らず、友人からも気軽に「ちょっと貸して」と言われがちですが、こちらも手指に付着している細菌やウイルスによる接触感染を引き起こすリスクが高まります。
また、ハンドクリームに限らず、指を入れて取るタイプのナイトクリームや、個包装になっていないフェイスパックなど、化粧品は素手で触るものが意外と多いのでご注意を。共有せずそれぞれ専用のものを使うか、手指を直接入れないで、使い捨てのスプーンやヘラなどを利用するようにしましょう。
家族とさまざまなアイテムの共有を避けるべき最大の理由は、接触感染予防です。共有すべきではないアイテムはそのほかにも、くしや下着、歯ブラシ、食器などが挙げられます。
まだまだ寒い季節が続き、インフルエンザなどの感染症も流行しています。“一家全滅”を避けるためにも、日頃から分けられるところは分けるなど、習慣づけることがとても大切です。
(Hint-Pot編集部)
佐藤 留美(さとう・るみ)
久留米大学医学部卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などのアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。