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クローゼットに防虫剤は必要? 衣類を虫から守る方法をメーカーに聞いた
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引っ越しや衣替えなど、衣類をクローゼットにしまうときに使用する防虫剤。近年では建物の気密性も高まり、衣類が虫食いに遭ったという経験はそう多くはないのかもしれません。となると、疑問に思うのが「防虫剤って本当に必要?」ということ。そこで、蚊取り線香をはじめ「ピレウォッシュ」など、防虫剤の製造販売を行うライオンケミカル株式会社開発部の旭和也さんに伺いました。
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外出時の衣類や洗濯物から虫が入ってくる可能性も
――近年は、建物の気密性が高まり「防虫剤は必要ない」との声も聞かれます。それでもやはり防虫剤はクローゼットやタンス、押し入れに必要なものなのでしょうか。
「外出時に衣服に付着して屋内に持ち込んだり、外干しの洗濯物に付着して取り込んでしまったりすることが原因で、気づかないうちに虫を屋内へ入れてしまうおそれがあります。繊維製品の害虫は目には見えるのですが、大きい虫ではありません。ですからなかなか見つけることができないのです。また、すでに虫が産卵していた場合は防除しにくくなりますので、防虫剤は常に置いておくことを推奨しています」
――「なかなか見つけることができないほど小さい」害虫とは、どのような種類があるのでしょうか。
「イガ、コイガ、カツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシなどです。この虫たちがかじることで、衣類に穴を開けます。また、繊維には塵性ダニ類も付着するため、弊社の防虫剤には、それに対する効果もあります」
防虫剤の種類や選び方 においに敏感なら無臭タイプを
――防虫剤にはさまざまな種類がありますが、それぞれの違いはなんなのでしょうか。
「まず、防虫剤には大きく分けて、昔ながらのパラジクロルベンゼンタイプ、においのつかないピレスロイド系薬剤を使用したタイプの2種類があります。前者は大容量のものが多いので、たくさんの場所で使いたい方、においを感じて効果を実感されたい方におすすめです。一方、においに敏感な方には、ほぼ無臭のピレスロイド系薬剤を使用したタイプがおすすめ。。金糸や銀糸が入っている着物や毛皮、ボタン類(金属、プラスチック製品)がある衣類など、幅広く使用できるのがポイントです」
――防虫効果があるということは、長期間使用すると人間の体に害が及ばないのかも気になります。
「虫と人間では、体の仕組みが大きく異なります。そのため、通常の使用方法であれば問題ありません。ただ、昔ながらのパラジクロルベンゼンタイプの防虫剤に関しては、においに敏感な方は少し気分が悪くなることもあるようです。そういう場合は、先ほども触れましたが、においのつかないピレスロイド系の薬剤を使用したタイプの防虫剤がおすすめです」
――そのほか、防虫剤を選ぶ際のポイントがあれば教えてください。
「収納容器のサイズに合わせて種類を選ぶといいでしょう。洋服ダンス用やクローゼット用などさまざまなタイプの防虫剤がありますが、収納容積に合わせて薬剤量などを調整しています。衣類をしまう場所によって使い分けるといいでしょう」
防虫剤の効果を得る「正しい使い方」とは
――洋服ダンスの引き出し用の防虫剤を大きなクローゼットの中に置くなど、表示されている容積よりも広い空間に使用した場合、防虫効果はなくなるのでしょうか。また、逆の場合はどうなのでしょうか。
「まったく効果がなくなるわけではありません。表示容積よりも広い空間に使用した場合は効果が弱くなってしまいますが、逆に表示容積よりも狭い場所で使用した場合、とくに不具合は起きないと思います。しかし、オーバースペックのため推奨はしていません。また若干ではありますが、防虫効果に変動が出るおそれがありますので、用法用量を守ってお使いいただくのがベストです」
――防虫剤の効果を得るためのコツはありますか。
「防虫剤を使用する際は、衣類を隙間なく詰め込まずに、余裕を持って収納するよう心がけてください。薬剤が届きにくくなるだけでなく、通気性が下がりますので、湿気が増えてカビが生えやすくなるおそれがあります。一方で防虫剤の薬剤効果は、クローゼットなどの密閉した空間に入れることで最大限に発揮されます。外との隙間はできるだけ作らないようにしてください」
――防虫の観点より、クリーニングや洗濯後の衣類をしまう前にやっておくと良いことはありますか。
「クリ―ニング店から返却された衣類にはビニールのカバーがかかっていることもあるかと思いますが、カバーをつけたまましまうと、防虫効果が衣類に届きにくくなります。また、湿気がこもってカビが生える一因にもなります。そのため、カバーをはずしてからクローゼットなどにしまうようにするといいでしょう。また、ご自宅で洗濯したあとの衣類については、気づかないうちにゴミなど異物が付着している場合がありますので、異物に寄ってくる虫を防ぐためにも、事前に衣類をはたくなどしてしっかりと付着物を取り除くことが大事です」
――防虫効果を高め、正しく使用するために気をつけるポイントを教えてください。
「防虫剤に限った話ではありませんが、用法用量通りにお使いいただくのがベストな使い方です。パッケージの裏面の記載をしっかりと読まずに使ってしまうと、本来の効果を発揮できないまま使い切ってしまったり、思わぬ失敗を招いたりすることがあります。面倒でも、正しい使用方法を確認してから商品を使うようにしてください。また、化学合成繊維などの虫が好まない衣類であっても、皮脂などの汚れがあるとそれを食べるついでに繊維もかじりますので、衣類をしまう際には注意していただきたいですね」
蚊取り線香の原料となった「除虫菊」の栽培が盛んな和歌山県有田市に本社を置く、明治18年創業の老舗日用品製造メーカー。世界初の蚊取り線香自動製造機を発明するなど、蚊取り線香を世界に広めるきっかけを作った企業で、現在は家庭用殺虫剤、衣類用防虫剤、洗浄剤など多くの商品を製造販売している。
(Hint-Pot編集部)