食
若年層に人気のノンアルコールビール 「健康そう」なイメージは本当? 栄養士に聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
ノンアルコールビールはほかの飲料と比べて炭酸が強く、爽快な飲み口から、水分補給を兼ねて愛飲している人もいるでしょう。マイボイスコム株式会社が2023年に1万人以上を対象に行った、ノンアルコールビールに関するインターネット調査によると、ノンアルコールビール飲用者は3割。そのうち週1回以上飲む人は約25%で、若年層の比率が高いことがわかりました。アルコールが入っていないことから、なんとなく健康に良さそう、あるいはダイエットに効果的といった印象を持ち、安心してついついたくさん飲んでいませんか? 飲みすぎには、どんなリスクがあるのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
◇ ◇ ◇
ノンアルコールビールは水分補給になる?
ノンアルコールビールはアルコール分1%未満の清涼飲料水で、日本食品標準成分表では「ビール風味炭酸飲料」として扱われています。一般的に清涼飲料水とは、飲んだときにさわやかでのどの渇きを癒やすのに適した飲み物をいい、お茶やコーヒー、野菜ジュース、ミネラルウォーターなども含まれます。
アルコールビールは利尿作用があるため、脱水状態を引き起こしやすい飲み物ですが、ノンアルコールであれば利尿作用はありません。そのため、単純に水分補給という点でいえば水分の補給にはなるでしょう。
しかし、暑い季節の熱中症予防のための水分補給という観点では、おすすめできません。汗と一緒に放出されたカリウムやナトリウム、マグネシウムなどのミネラルを補給できないからです。
ノンアルコールビールの飲みすぎによるリスクとは
ノンアルコールビールは、アルコールの代わりの飲み物として楽しむのが肝臓への負担も少なく良いでしょう。とはいえ、ノンアルコールビールを大量に飲みすぎるのは良くありません。
まず、気になるのは添加物です。メーカーや製品によって成分に違いがありますが、ノンアルコールビールには、ビールの風味に近づけるために香料や酸味料などの添加物を含んでいるものが多くあります。
なかでも混同されやすいのが、人工甘味料です。「糖質ゼロ」や「糖質オフ」とあっても、「糖類」の人工甘味料を使用している場合があります。低エネルギーで血糖値の上昇を抑えるという面では良いのですが、食品由来の成分ではなく健康に対して懸念されている面もあります。過剰な摂取は控えたほうが良いでしょう。
もうひとつは、ノンアルコールビールだからといってアルコール分が0%とは限らない点です。冒頭で述べた通り、ノンアルコールビールは清涼飲料水で、アルコール分1%未満の飲み物です。微量でもアルコールを含むものを一度に大量に飲めば、アルコールの影響を受ける可能性があります。
また、ノンアルコールビールは常温ではなく、冷やして飲むのが一般的です。暑いときにキンキンに冷えた飲み物はとてもおいしいのですが、飲みすぎると胃腸が冷えてしまい、消化不良を引き起こす原因となります。ノンアルコールビールに限らず冷たい飲み物全般にいえることですが、暑いからといって大量に飲みすぎると食欲不振につながり、暑さにバテやすくなるので逆効果です。
ノンアルコールビールは1日1缶を目安に、適量をおいしく飲みましょう。ただし、習慣として毎日飲み続けるのはあまり好ましくありません。選ぶ際は表示を見て、アルコール分や添加物、糖質を確認しましょう。とくに車の運転をする場合は、アルコール分を必ず確認してから飲んでください。
法律上は20歳未満の人が飲用しても問題はないですが、多くのノンアルコールビールは20歳以上の飲用を想定して作られたものです。20歳未満の飲用はおすすめしません。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾