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仕事・人生

減少する街の書店の背景 元カリスマ書店員が語る書店だから味わえる「成功体験」とは

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著者:Hint-Pot編集部・鍬田 美穂

書店だからこその本との出合い 書店員が果たす役割とは

鬼瓦レッドさんこと増山明子さん【写真提供:増山明子】
鬼瓦レッドさんこと増山明子さん【写真提供:増山明子】

 増山さんは、本の楽しさは自分で選ぶことに醍醐味があるといいます。誰かに指示されたり、与えられたりではなく「“自分で選んだ本が読んだら楽しい”という成功体験も大事」なのだとか。

 書店は本との出合いの場であり、訪れた人が選ぶのを助けるのが書店員の仕事――というのが増山さんのスタンス。棚をめぐりながら店内の案内掲示やポップなどをガイドにし、それぞれが勘を働かせて、おもしろい本を発見してもらうのが一番だと話します。

 そうした出合いを演出する書店員は、自身が本当に「おもしろい!」と思う本を手に取ってもらいやすくなるよう工夫しているそう。平積みにして表紙が目につくようにしたり、コーナーを設けたり、ポップに推薦文を添えて魅力を伝えるのも役割のひとつです。

 たくさんの本に触れるだけでなく、「お客様に『これがおもしろかった』と教えていただくことも多い」という書店員だからこそ、魅力が伝えられることや、演出できる出合いがあるといいます。

 増山さん自身は「人気作品は多くの人が紹介してくれる。ここぞというときだけ、自分が本当におもしろいと思う本をしつこく(笑)紹介します」と、自らの視点で推すべき本を選んでいるそう。

 主観を持っておすすめするだけに、「『ご覧いただけますか?』『応援してください』という姿勢が大事ですね。自分がおもしろいと思うものを一緒に楽しんでもらえるよう、巻き込んでいくみたいな感覚」と表現する増山さん。実際に巻き込まれ、“この人のすすめる本は、おもしろい”と思ってくれるお客様を増やしてきました。

「『つまらない本』というのはなくて、自分にハマるか、ハマらないか。パクチーが好きな人もいれば、嫌いな人もいますよね……という、料理に近いものがあると思います。失敗したくない人もいるかもしれませんが、自分で探して見つけたものが、おもしろかった喜びは大きいです。夢中になってしまうほど楽しめるものを、自分の目で見て、手に取って見つけ出してもらいたいと思いますね」

 たくさんの本に囲まれ、棚をめぐりながら選ぶのは、“宝探し”のような面もあります。案内掲示やポップを道しるべに、この夏を彩る一冊を探すのも楽しそうですね。

(Hint-Pot編集部・鍬田 美穂)