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「暑い日こそ熱い食べ物」といわれるけれど、グツグツ煮立っているほうがいいの? 栄養士に聞いたよくある誤解とは
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教えてくれた人:和漢 歩実
今年も残暑が厳しく、猛烈な暑さが続きます。つい冷えた飲み物や食べ物にばかり手が伸びてしまいますが、昔から「暑い日こそ熱い食べ物」といわれるのはなぜなのでしょうか? かえって暑くなりそうな気がしますが……。メリットやよくある誤解について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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夏に胃腸を冷やさないための食の知恵
8月も終盤ですが、引き続き危険な暑さが続きます。今年の夏は、冷たい麺類や冷製料理、冷えた飲み物、かき氷やアイスクリームなどを飲食する機会が、例年より多いかもしれません。
「暑いときこそ熱い食べ物」と昔からいわれることは、一見不向きに思えるかもしれませんが、これは胃腸を冷やさないための、食の知恵が詰まった言葉だといえるでしょう。
冷たいものばかりを摂取していると、胃腸が冷えて消化の働きが弱り、栄養の吸収も食欲も落ちてしまいます。そうなると疲れを感じやすく、疲れが取れにくくもなり、体調を崩すことにつながります。
そこで、冷たいものではなく温かい食事を取ることで内臓を温め、内臓の活動を活発にし、血行促進や免疫機能を高めようというわけです。体が温まると適度な汗をかき、汗が蒸発するときに体の表面の温度が下がり、結果として涼しく感じられます。
冷たい食べ物や飲み物を取りすぎるのは、夏バテのもと。そんな食事がずっと続いているのであれば、昔からの知恵を思い出し、食生活を見直してみましょう。
熱い食べ物への誤解 熱々は危険
ただし、「熱い食べ物」を文字通りに解釈して、グツグツと煮立った熱々料理や熱湯などを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、そこまで熱いものを摂取することはおすすめできません。
それは、熱い食べ物は体への負担が大きいからです。高温の飲食物を摂取すると、口の中をやけどしたり、皮がむけたりすることも。また、口内の炎症部分から細菌が入ってしまったり、咽頭や食道などの細胞に突然変異が生じてがん化したりするリスクも考えられます。熱い食べ物ではなく、適度に温かい食べ物や飲み物を心がけてください。体温に近い温度ほど消化しやすいといわれています。
また、近年のような高温多湿の酷暑では汗が蒸発しにくく、温かいものを食べても体の表面温度が下がらず、むしろ熱が体内にこもってしまうことも考えられます。その場合は、冷たいものでかまいませんのでこまめに水分補給し、冷房機器や除湿器などを使用して、快適な環境を保つようにしましょう。
食べ物の温度だけではなく、食品でも工夫を
熱いものというと、料理や飲み物の「温度」をイメージするかもしれませんが、香味野菜や香辛料など食品の持つ力を取り入れて、体を冷やさないようにするのも一案です。
たとえば、昔から薬効が注目されてきたショウガ。生のショウガにはジンゲロールという辛味成分が含まれ、胃腸の働きを高めますが、乾燥させたり加熱したりするとショウガオールに変わり、体を温める働きが期待できます。加熱料理や温かい飲み物にアクセントとして加えてみてもいいでしょう。ショウガの香りは食欲を増進させるので、夏バテ予防にも効果的です。
また、手軽な香辛料としてシナモンもおすすめです。桂皮と呼ばれ、古くから薬膳でも冷えの食養生に使われます。血行を促進し、体を温める効果も。スイーツによく用いられますが、紅茶やコーヒーなどの飲み物に加えるといいでしょう。
厳しい暑さはまだまだ続きそうです。暑いときこそ、胃腸を温める食事の工夫をしていきましょう。
(Hint-Pot編集部)