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「お返しできれば」 存命なら91歳以上 少女の成長記録した古いアルバムに6.6万“いいね” 投稿者の思いとは

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著者:Hint-Pot編集部

「風景などを描いたバック紙を用いていたことがわかったのが収穫」

写真館で撮影されたと思われる一枚。背景に注目【写真提供:papier colle(@mondo_modern)】
写真館で撮影されたと思われる一枚。背景に注目【写真提供:papier colle(@mondo_modern)】

 また、写真の背景にも注目します。三輪車で姉弟がおすましをした、写真館で撮影されたと思われる一枚の背景には、立派な日本庭園の風景画が描かれています。

「ここ数年、19世紀後半からの写真館写真を研究していますが、日本の写真館についてはあまり知りませんでした。欧米と同じように風景などを描いたバック紙を用いていたことがわかったのが収穫です。多くの写真館はグレーバックの背景しか用意していなかったと思うので、風景の絵を置いた写真館はけっこう大きく、高めのところではなかったかと想像します」

 投稿にはほかにも、戦時中の疎開先で撮影された記念写真やお母さんと少女のツーショット、そして学芸会の様子や、大人になって劇団で演じる様子も収められていました。どれも丁寧にラベリングされ、深い愛情が伝わってきます。

「ご家族が見つかるなら、お返しできれば」

「SNSに投稿していいのか……」という迷いもありましたが、長澤さんがXにこれらの写真を投稿したのには、資料として価値が高いことのほかに、このアルバムをご家族の元へ返してあげたいという願いがありました。

「私事になりますが、私も兄姉もみな子どもがおらず、私自身は独身なので家系が途切れます。アルバムを見て、自分の行く末もちょっとよぎり買うか迷ったのですが、ただとりあえず写真をじっくり見たいと思って購入しました。自分もそろそろ終活で、物を処分していかなければならないので、もしこのアルバムのご家族が見つかるなら、お返しできればなぁと思いました」

 アルバムの日付から計算すると、少女が生きていれば現在は91~93歳ほどになります。Xを見た人がリサーチをして、モデルとして化粧品メーカーの雑誌に出演する同姓同名の女性が見つかりましたが真相はわからず。

「アルバムが古書市場に出たということは、おそらく受け継ぐご家族がいらっしゃらないのでは?」と長澤さんは考察します。「Hint-Pot」編集部でも、婦人雑誌で活躍する同姓同名の人物を見つけましたが同一人物であるかの確証はなく、現在もご存命かはわからない状態です。

 今でも、家族や親族が見つかればぜひアルバムをお返ししたいという長澤さん。もしも少女の家族や親族の人がご覧になっていたら、ぜひ長澤さんまでご一報をお願いします。

◇長澤均(ながさわ・ひとし)
服飾史家/グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学卒業後、1981年にカルチャー雑誌「papier colle」を創刊し、同名のデザイン事務所を設立。2017年にはオンライン古書店「mondo modern」をオープンした。11月には編集・デザイン・執筆を担当した、ヴィンテージコンピューターを紹介する新たな著書を刊行予定。また、同月に共著「身体批評大全」(新耀社刊)に「モードと政治的身体 色彩とファシズムと計測をめぐって」という論考が掲載される。
Xアカウント:papier colle(@mondo_modern

(Hint-Pot編集部)