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寿司は手で食べるのがマナー? やってしまいがちなしょうゆのつけ方とは いまさら聞けない寿司の食べ方を聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

握り寿司、どう食べる?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
握り寿司、どう食べる?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 外国人観光客にも人気の日本の寿司。回転寿司店などカジュアルな場であれば気にしなくとも、職人さんが握る寿司店のカウンター席で食べる場合、出された握り寿司を手で食べるべきか、箸で食べるべきか、ふと食べ方が気になることもあるかもしれません。また、しょうゆのつけ方に戸惑うことも。いまさら聞けない素朴な疑問を、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

手で食べるのは江戸時代の風習の名残

 握り寿司は手で食べるものなのか、箸で食べるものなのか。結論からいうと、どちらでも問題ありません。そもそも、なぜ寿司を手で食べる風習があるのかについては、江戸時代にさかのぼります。寿司が、現代でいう“ファストフード”のような存在だったことが関係しています。

 江戸の忙しい庶民が手軽に食べられる軽食として、人気を集めた握り寿司。屋台で提供され、その場で立ちながら手でつまんで食べるスタイルが一般的だったといわれています。人々が店ののれんで手を拭いて出入りしたため、「のれんが汚れている寿司屋はうまい、繁盛している」という言い伝えも生まれたほどです。

「寿司は手で食べるもの」というのはこの名残で、今は箸を使っても問題ありません。いずれも、寿司を持ち上げる際にシャリが崩れないよう注意しましょう。

 箸を使って食べるときのコツは、寿司をまっすぐ上に持ち上げようとしないことです。そうすると崩れやすくなります。箸でシャリの真ん中あたりを軽く挟み、寿司を少し横に寝かせるようにしましょう。

 手で食べる際は、親指と人差し指、中指を使って寿司の側面とネタを軽くつまみ、横に寝かせて持ち上げます。ただし、手で食べる場合でもガリは箸で食べましょう。

意外に迷う? しょうゆのつけ方

 もともとネタに味がついているものであれば、そのまま口に運んで良いですが、しょうゆをつけて食べる場合はシャリにつけないように気をつけてください。

 シャリは茶色になると見た目が悪く、しょうゆがつくとぽろぽろと落ちやすくなってしまいます。しょうゆはシャリにつけず、ネタや海苔につけるものと覚えておきましょう。また、素材本来の味が楽しめなくなるので、しょうゆのつけすぎもNGです。ほんの少しだけつけます。

 握り寿司の場合は、箸でも手でも前述のように少し横に寝かせて持ち、そのまましょうゆ皿に移動させたら、ネタの先にしょうゆを少しつけて食べるのがスマートです。鉄火巻きなどはやや斜めに持ち、海苔とシャリの境目あたりにしょうゆを少しつけます。しょうゆが垂れ落ちないように、しょうゆ皿を受け皿のように手で持ってもかまいません。

 ショウガやネギなどの薬味がのっている握り寿司や、ウニやイクラなどの軍艦巻きを食べる場合は、寝かせて持ち上げると薬味やネタが落ちてしまいます。この場合は、箸でガリをつまんでしょうゆをつけ、ハケのようにネタの上にしょうゆをつけてから食べると良いでしょう。キュウリが添えてある場合は、ガリの代わりにキュウリをハケ代わりにしても良いとされています。

 寿司は基本的に、一貫をひとくちで食べ切るものです。もしひとくちで食べられない場合は、皿に戻さず、手や箸で持ったまま食べ続けていきましょう。

栄養豊富な魚介類を楽しく、おいしく食べよう

 寿司のネタをお好みで注文したり、食べたりするのに順番があるのか気になる人も多いかもしれません。一般的には、白身などの淡白な味のネタから食べ始めていき、味の濃いネタに移っていくのが寿司ネタのおいしい味わい方といわれています。最後にカッパ巻きやかんぴょう巻き、玉子で締めるといった流れがありますが、とくに決まりはありません。

 海に囲まれた島国である日本の寿司は、何よりも新鮮で低カロリー、そしてヘルシーなところが訪日外国人からも人気なのでしょう。寿司の主なネタである魚は、良質なたんぱく質をはじめ、ビタミンやミネラルをたっぷり含んでいます。とくにサバやイワシ、マグロなどの青魚は、血液の流れを良くして血栓予防効果が期待できるEPA(エイコサペンタエン酸)、脳や神経系の健康に寄与し記憶力や集中力を高めるといわれるDHA(ドコサヘキサエン酸)など、オメガ3系の不飽和脂肪酸が豊富。積極的に摂取してほしい食品です。

 食べ方のマナーなどで疑問が生じることもあるかもしれませんが、ほかの人を不快にさせない気配りをするのがエチケットの基本です。あまり神経質にならず、日本の食文化を代表する寿司を楽しく、おいしく食べましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾