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刺身の「つま」 食べるのはマナー違反? 添えられているのが理に適っている理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

刺身の盛り合わせ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
刺身の盛り合わせ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 外食先で刺身盛り合わせを注文したり、スーパーマーケットで刺身パック詰めを買ったりすると、千切りにした大根や大葉など「つま」と呼ばれるものが添えられています。食べて良いのか残すものなのか、悩んだことがある人もいるでしょう。とくに、外食先ではどうしたら失礼にあたらないのでしょうか? 8月15日は「刺身の日」。記念日にちなみ、刺身に欠かせないつまについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

食べる? 残す? どちらが正解?

 刺身のつまは、単なる飾りではありません。生ものを安全に食べる昔からの知恵として、食中毒や消化不良を防ぐ作用も期待されているので、刺身と一緒に食べるほうが好ましいといえます。

 つまには主に、千切りの大根や大葉、穂ジソ、小菊、海藻などが使われます。彩りで見た目を良くして、刺身を引き立てる役割もあります。

 外食先でつまを残したから失礼だということはありませんし、食べたから下品だということもありません。どちらがマナー違反なのか基準はありませんが、食品ロスなどの観点からも残す理由はないでしょう。高級なお店では、こだわりのつまを添えていることもあるので、ぜひ残さずに食べてもらいたいです。

 小菊は手で取り、箸で花びらをはずし、小皿のしょうゆに散らして刺身と一緒に食べるとスマートです。がくは苦いためおすすめしません。穂ジソも穂の部分を同様に箸でほぐして、しょうゆに散らすと食べやすいでしょう。見た目がきれいで香りも良く、また違った刺身のおいしさを楽しめます。

 家で大根などの刺身のつまが余った際は、みそ汁の具材などに使うと良いですよ。生臭さが気になる場合は、いったん水洗いしてから活用しましょう。

そもそも刺身のつまとは 「けん」との違い

 刺身につまが添えられるようになったのは、しょうゆが一般に広まった江戸時代中期といわれています。本来は「あしらい」といい、「けん」「つま」「からみ」の3つに分けられます。

 けんとは、大根やニンジン、キュウリなどの千切りや薄切りを剣のように刺身の後ろに高く盛ったものです。つまとは、刺身の横や手前にある少量の野菜や海藻、大葉、穂ジソなどのこと。そしてからみとは、ワサビやおろしショウガなど味に辛味があるものをいいます。

主な刺身のつまの栄養や特徴

 それでは、刺身のつまに用いられる主な食品の栄養について解説しましょう。

○大根
 辛味成分のアリルイソチオシアネートには殺菌作用があり、菌の繁殖を防ぎます。アミラーゼやプロアミラーゼなどの消化酵素も含むため、消化を助けてくれるでしょう。

○大葉
 香り成分ぺリルアルデヒドに、殺菌作用や防腐効果があります。刺身のつまとしては、切らずに葉の形のまま使われることが多いですが、この香り成分は刻むとより香り高くなり、効果も高くなるといわれています。

○海藻類
 刺身で食べる魚介類には食物繊維が含まれていません。そのため、食物繊維が豊富な海藻類を一緒に食べると良いでしょう。

○ショウガ
 辛味成分のジンゲロールには、殺菌作用があるといわれています。また、魚の臭みを抑えてくれる効果も。

○ワサビ
 辛味成分のアリルイソチオシアネートは、とくに強い抗菌作用が期待されており食中毒予防に。また、独特の辛味が魚の臭みを感じにくくしてくれます。

 前述した通り、刺身のつまの役割は、盛りつけを豪華に見せる飾りだけではありません。栄養の観点からも、食中毒や消化不良を防ぐ、刺身の鮮度を保つ、口直しなど、さまざまな役割が期待されて現代に至っていることがわかりますね。

(Hint-Pot編集部)