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ため息をつくのはなぜ? メカニズムやメリットを医師が解説 病気が隠れている場合も
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教えてくれた人:鈴木 香奈
日照時間が短くなっていく10月から11月にかけては、アンニュイな気分になりやすい時季です。気分が落ち込んだときや、温かいお風呂に浸かってリラックスしたときなど、思わずため息をついてしまうことがあります。「ため息をつくと幸せが逃げる」など、一般的にはネガティブな印象が強いですが、ため息にはどんな役目があるのでしょうか。人がため息をつく理由や、メリットとデメリットなどについて、耳鼻咽喉科・鈴木香奈医師が解説します。
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ため息は体の防衛反応
「はぁ~」と大きなため息をついたら、気分が少し落ち着いた経験がある人は少なくないでしょう。
生命活動を維持するのに大切な自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあります。気分が落ち込んだり、イライラしたりするなど、人はストレスを受けているときに交感神経が優位になり、体が緊張して呼吸が速く、浅くなります。
すると、体が酸欠状態になるため、緩和しようとゆっくりと深い呼吸をします。それがため息です。
無意識にため息が出るのは、深い呼吸をし、副交感神経の働きを高めるため。ため息は体の防衛反応なので、決して悪いものではありません。また、温かい飲み物を飲んだり、お風呂に浸かったりしたときに「はぁ~」とため息が出るのは、体がリラックスし副交感神経がきちんと働いているからといえるでしょう。
意識的に大きなため息をつくのもおすすめ
ため息を我慢するとストレスを抱えることになるので、無理に止めることはおすすめしません。また、意識的に大きなため息をつくことにはメリットもあります。
大きなため息をつく際に、思い切り息を吐くことで肺がストレッチされ、通常の約2倍の空気を取り込むことができます。すると、体が酸欠状態から解消され、気分や頭がすっきりします。緊張もほぐれ、自律神経の働きを回復させる効果が期待できるといわれています。
一方のデメリットは、周囲にネガティブな印象を与えることです。近年、意図的にため息を他人に聞かせることは“フキハラ”(不機嫌ハラスメント)と呼ばれ、威圧感を与える迷惑行為とされています。周囲に人がいるときは席をはずしたり、ため息ではなく深呼吸をしたりするなどの配慮をするといいでしょう。
最後に、自分では気づきにくいですが、無意識にため息を頻繁につく、止まらない、以前より増えたといった場合は、病気のサインの場合があるので注意が必要です。うつ病や貧血、逆流性食道炎、肺の病気など、さまざまな病気が考えられます。誰かから「ため息が増えた」などの指摘を受け、体の不調を感じている場合は内科や総合診療科などを受診し、医師に相談しましょう。
(Hint-Pot編集部)
鈴木 香奈(すずき・かな)
金沢駅前ぐっすりクリニック院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。1996年、金沢医科大学卒業。睡眠時無呼吸症候群を核に一般耳鼻咽喉科診療を行う。