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知っておきたい長寿祝いの決まり 還暦は何歳? 赤いちゃんちゃんこを着る理由も
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還暦のお祝いで、赤いちゃんちゃんこと頭巾を着用する風習があります。還暦を祝うのは61歳といわれることもありますが、60歳と何か違いがあるのでしょうか。また、赤いちゃんちゃんこを着る理由とは? 日本古来の伝承や習わし、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、還暦のお祝いについて紹介します。
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還暦は何歳で祝うもの? 年齢の数え方
還暦とは、昔の暦で十干と十二支を組み合わせた干支が60年で一巡し、生まれた年の干支に戻ること。文字通り「暦(こよみ)が還(かえ)る」ことをいいます。「61歳」でお祝いをするというのは、「数え年」によるものです。
数え年は昔の年齢の数え方で、何月に生まれても生まれたそのときを「1歳」とし、1月1日(元日)を迎えたら全員の歳が一斉に1つ増えます。還暦のお祝いも、伝統的には誕生日に関係なく、数え年の61歳で祝っていました。
しかし、数え年の年齢は、誕生日の満年齢と比べて2歳も差が出てしまうことがあります。たとえば、12月31日生まれの赤ちゃんは翌日の元日には2歳になり、1月1日生まれの赤ちゃんが2歳になるのは1年後の元日。このように、年末に生まれた人ほど、満年齢と差が生じてしまうのです。2024年11月でいえば、1964年12月に生まれた人は満59歳ですが、数え年だと61歳になります。
現代でも、地域や家庭によっては数え年の風習が残っているところもありますが、60歳の誕生日を迎えた満年齢で還暦のお祝いをするのが一般的になっています。
「赤色」に込められた意味とは
赤いちゃんちゃんこで還暦を祝う理由は前述の通り、干支が一巡して暦が生まれたときに戻るため、生まれ変わって「赤子に還る」と考えられたことにあります。そこで、赤ちゃんの産着にちなんで、赤いちゃんちゃんこが用いられるようになったとか。また、赤色は生命力や再生を象徴し、古くから魔除けの力があると信じられてきました。
そのため、赤い衣装を身に着けることで、新たな節目を迎える人の厄払い、健康と長寿への願いが込められています。
頭巾は、江戸時代に年配者のかぶりものとして広まり、還暦祝いにも取り入れられるようになりました。この頭巾をかぶるスタイルは、富と福を象徴する「大黒頭巾」にも似ており、人生の新しい段階に入る祝福の意味もあるようです。
人生100年時代にも受け継がれる通過儀礼
人生50年といわれた時代では、還暦まで過ごせるのは長寿を象徴し、喜ばしいこととされていました。還暦で隠居をするのが一般的で、人生の大きな節目とも。しかし、人生100年時代とされる現代は定年の延長や再雇用制度などもあり、60歳といってもまだまだ働き盛りです。還暦を迎える人に、お年寄りのイメージは薄いでしょう。
それでも、還暦は人生で一度きりの通過儀礼であり、長寿と新たなスタートを祝う大切な機会です。身近に還暦を迎える人がいたら、伝統的な赤いちゃんちゃんこと頭巾まではいかなくても、ストールや帽子、アクセサリーなど、赤い小物を贈ってお祝いしてみるのも良いでしょう。
また、ご自身が満60歳になる方は、無病息災の願いを込めて、風習にならい赤いものを身に着けてみるのも良いかもしれません。
(鶴丸 和子)