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お煮しめと筑前煮の違いとは お正月の煮物料理に込められた願いなどを栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実
お正月のおせち料理の定番のひとつ、煮物。「お煮しめ」や「筑前煮」などと呼ばれることがありますが、そもそも違いはなんなのでしょうか。お正月のおせち料理に入れるのは、お煮しめ? 筑前煮? お正月の煮物料理に込められた意味などを、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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お煮しめと筑前煮は別料理?
お煮しめと筑前煮。どちらの煮物も見た目は似ていますが、大きな違いは調理方法にあります。お煮しめが具材を長時間煮たものに対し、筑前煮は具材をいったん油で炒めてから煮たものです。
具材は、地域や家庭によって異なります。一般的に、お煮しめは根菜類やイモ類、乾物類、コンニャクなどの植物性食品が用いられることが多く、筑前煮はそれらに加えて、主に鶏肉など動物性食品が材料に使われるのが特徴です。
そもそもお煮しめは、室町時代の頃に精進料理として食されていたようです。材料をしょうゆで煮詰め、味の染みた食べ物を「煮染(煮しめ)」と呼ぶようになったといわれています。一方の筑前煮は「がめ煮」とも呼ばれ、もともとは福岡の郷土料理のひとつです。
どちらも、しょうゆをメインに砂糖やみりん、酒、だしなどで味つけした煮汁で、具材に煮汁の色がつくまで煮込んだもの。汁気が少し残っていて、照りをつけないのが料理の特徴です。
お煮しめと筑前煮は、厳密には異なる料理ですが、正月のおせち料理の定番として、どちらを入れるかといった決まりはありません。地域や家庭で受け継がれてきた煮物を食べましょう。
お煮しめや筑前煮に込められた願いとは
さまざまな山の幸がひとつの鍋の中で一緒に煮られることから、お煮しめや筑前煮には「家族が仲良くひとつに結ばれ、末永く家が繁栄しますように」との願いが込められています。
お正月はもちろん、祝い事など人がたくさん集まるときにも振る舞われてきた、縁起の良い料理です。入っている食材の一つひとつにも、意味が込められています。代表的な具材の縁起と栄養面の特徴を紹介しましょう。
【育ち方や形状で子孫繁栄や長寿を願う具材】
○里芋
里芋は親芋から子芋、孫芋とたくさんつくことから「子孫繁栄」の願いが込められています。とくに里芋の一種の「八つ頭」は、人の頭(リーダー)になるという願いや「八」に末広がりの意味も。栄養面では血糖値やコレステロール値の上昇を抑え、生活習慣病予防に期待できる水溶性食物繊維を含みます。
○ゴボウ
ゴボウは、地中深くまで根を張ることから「土地に根づいて家が繁栄するように」という願いが込められています。また、力強く成長する姿から「長寿」の象徴に。栄養面では、整腸作用があり便秘予防に期待できる不溶性食物繊維が豊富です。
○レンコン
複数の穴があるレンコンは、向こう側が見えることから「将来の見通しが良い」縁起物。また、種が多いことから「子孫繁栄」の意味もあります。栄養面では、食物繊維をはじめ、免疫機能の向上や美肌効果に期待できるビタミンCも多いのが特徴です。
【切り方で夫婦円満や良縁、長寿を願う具材】
○ニンジン
古来、縁起物の梅花の形に飾り切りしたニンジンには、生活の「豊かさ」を願う意味が。栄養面では、必要時に体内でビタミンAに変わるβカロテンが多く、皮膚や粘膜を丈夫にして免疫機能を高める効果が期待できます。
○コンニャク
真ん中に切れ目を入れ、ねじって結ぶ手綱コンニャクは、結び目を縁結びにかけた「良縁」や「夫婦円満」の縁起物です。栄養面では、整腸作用があり、便秘予防が期待できる不溶性食物繊維が多く含まれます。約97%が水分であるため低エネルギー食品です。
○シイタケ
六角形にしたあと、カメの甲羅に見立てた飾り切りをして用いることで「長寿」の願いが。栄養面では、紫外線に当たると骨の成長を促すビタミンDに変わるエルゴステロール、コレステロール値の上昇を抑えるエリタデニンを含みます。
なにげなく食べている煮物料理も、一つひとつの食材に込められた先人の願い、現代栄養学からのメリットを知ることで、より特別なものに感じられるかもしれません。そんな思いを胸に、お正月の煮物を味わってみてはいかがでしょうか。
(Hint-Pot編集部)