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「すごく迷いました」 狩野恵里アナ レーサーの夫・山本尚貴選手SF引退セレモニー登壇の舞台裏
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テレビ東京の女性アナウンサー・狩野恵里さん。夫・山本尚貴さんは、レーシングドライバーとして活躍しています。「Hint-Pot」編集部では年末年始に特別企画として狩野さんにインタビューし、全4回の記事を掲載。第3回は、昨年11月にスーパーフォーミュラを引退した夫への思いや、サプライズで登壇したセレモニーの裏側について伺いました。
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「真正面から観られない」 2023年クラッシュ後の変化
「夫婦であり、子どもたちの父母でもあるけれど、働き人としてお互いに、リスペクトし合える存在でいたいと思っているのが大きいです」と、仲良し夫婦の秘訣を語った狩野さん。2016年8月に結婚した夫の山本選手は、スーパーフォーミュラやSUPER GTという日本最高峰の自動車レースで活躍するトップレーサーです。
レーシングドライバーとアナウンサー。大きく異なる仕事を持つ夫妻は、互いの仕事をリスペクトするからこそ、普段は相手の仕事について具体的な話はしないといいます。
ただ、危険を伴うレーサーという夫の仕事柄、「命あってのだよね。本当に生きてないと、意味がないからね……みたいな話はしていました」というふたり。しかし、2023年9月のSUPER GT決勝レース中にクラッシュし、山本選手は2か月の入院をする大けがを負いました。
狩野さんが「こんなにも命の危険を感じたことは、ありませんでした」と振り返る重傷から、懸命のリハビリを経て、山本選手は2024年シーズンのレースに復帰。11月に惜しまれながら、3度のシリーズチャンピオンを果たしたスーパーフォーミュラを引退しましたが、今後もレーシングドライバーとしてSUPER GTでの戦いは続きます。
「応援はもちろんするし、信じてはいるんですけど“万が一”が起こっての事故。それ以来、真正面から観られないというか……。テレビでレースを観るときはルーティンとして、ジグソーパズルとか、何か違うことをしながらじゃないと観戦できなくなりましたね」
山本選手を近くで応援し、誰よりも信じているけれど、妻として、家族として強い不安や心配を覚えた本音を狩野さんは明かしてくれました。
「中嶋監督が英断してくださったから…」
実は事故によるけがで、首に大きな損傷を負った山本選手。復帰戦となった2024年スーパーフォーミュラ初戦では3位で表彰台に上り、復活を強く印象づけます。それだけに鈴鹿でのシーズン最終戦を直前に控え、自ら「スーパーフォーミュラ引退」を発表すると大きな話題になりました。
狩野さんによると、山本選手は引退会見でも語ったように、体やこれからを心配した所属するナカジマレーシングの中嶋悟総監督から、「体のことが心配だから今年で後進に譲ってほしい」と伝えられたことが、決断のきっかけになったと語りました。
「引退って話になったとき、やっぱり正直ほっとした、安堵したというのが、一番の本音ですね」と、妻としての気持ちを明かした狩野さん。背中を押してくれた中嶋監督への感謝は、とても大きいと語ります。
「中嶋監督の親心には本当に感謝しかありません。ありがたいことに惜しんでくださる方もいて、彼はまだ乗りたかっただろうし、まだまだできたかもしれない。ただ、夢のある仕事だから、自分からマシンを降りる気持ちにはなれないと思うんです。誰かが止めてくれないと、決断できないこと。中嶋監督が英断してくださったから、決められたと思っています」