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タマネギについた「黒い粉」の正体とは 食べても問題ない? 栄養士に聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実

幅広い料理に大活躍の通年タマネギ。近年、その栄養メリットも注目され、日々食卓に取り入れている人もいるでしょう。比較的、日持ちすることから、ストックしやすいところも魅力です。しかしいざ使おうとしたら、タマネギにススのような黒い粉がついていて、食べて良いかどうか迷ったたことはありませんか。この黒いものの正体は、何でしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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黒カビによるもの 水洗いして取り除く
タマネギの皮の表面や、1~2枚むいた皮の間にシミのようについた黒い粉は、黒カビによるものです。この黒カビは、土着の麹菌などの一種といわれ、畑の土や種子にも存在しています。
通常、タマネギの皮についている黒カビは、胞子の状態なので、白い食用部分(りん茎)までは入り込みません。茶色い皮をむいてから流水で洗いましょう。黒カビをきれいに洗い落とせるのならば、基本的には食べて問題はありません。
ただし、子どもや高齢者、免疫機能が弱っている人は控えるほうが良いでしょう。もし黒カビが食用部分まで侵食している場合には、残念ながら食べずに廃棄することをおすすめします。
タマネギに黒カビが生える原因は、主に高温多湿の環境と考えられています。皮つきを丸ごと保存する際は、風通しの良い冷暗所がおすすめです。ネットなどに入れて吊るして保存するとさらに良いでしょう。キッチンペーパーなどで1個ずつ包んでおくと、湿気を吸い取ってくれるので有効です。
タマネギには健康に役立つ栄養がたっぷり
日本の家庭料理に欠かせない存在のタマネギですが、一般家庭に普及したのは明治時代以降。意外にも日本での歴史は浅く、新しい野菜です。近年の研究では、タマネギには健康に役立つ成分が含まれていることがわかっています。
1つは硫化アリル(アリシン)です。アリシンは、タマネギ独特の刺激臭のもと。代謝を促し、疲労回復に欠かせないビタミンB1の吸収を促進します。また、血流を促進する「血液サラサラ」効果や、抗菌・殺菌作用などでも知られている成分です。ただし、水や加熱に弱い特徴があります。栄養メリットをいただきたい場合は、加熱よりは生で、生で食べるならば長時間水にさらさないようにしましょう。
もう1つは、ケルセチンです。強い抗酸化力による血圧低下や脂肪吸収効果など、多岐にわたって体にもたらす効果が期待されています。心疾患やがん予防にも効果を発揮する可能性も示唆されている成分です。とくに、タマネギの茶色の外皮に多いとされています。水でよく洗い乾燥させた皮を、ティーバッグに入れてスープやみそ汁の出汁と一緒に使っても良いでしょう。
刺激が強いので食べ過ぎには注意
健康に役立つ成分が豊富なタマネギですが、食べすぎには注意しましょう。アリシンは、健康に役立つ反面、刺激が強い成分でもあり、大量に食べると胃腸の粘膜を傷つけ、胃痛や腹痛などを起こすことがあるといわれています。殺菌作用も強いので、腸内にいる善玉菌にも影響を及ぼし、腸内環境を悪化させて下痢や便秘などの症状を引き起こす場合もあるため、注意してください。
タマネギの適量には個人差がありますが、生で食べる場合は1日50グラム程度が良いでしょう。サイズが中くらいのタマネギならば、1/4程度が目安です。加熱するとアリシンの量が減るため、味も甘くなり刺激や腸内への影響を抑えることはできます。
タマネギに黒カビが発生しないように上手に保存しつつ、日々の献立に役立てていきましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾