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旅館再生も改修は「最低6000万円」…一人息子を育てるスザンヌが熊本でチャレンジ続けるワケ
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2015年の離婚発表後、東京での生活から離れ地元・熊本でシングルマザーとして一人息子を育てているスザンヌさん。3年前に再入学した母校の高校を卒業、大学生となった現在は、ファッションブランドの立ち上げや老朽化した旅館の再生事業など、実業家としても話題を呼んでいます。子育てをしながらタレントと社長業の二足のわらじで活躍するスザンヌさんに、尽きることのないバイタリティーの秘密を聞きました。(取材・構成=佐藤佑輔)
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ファッションブランド立ち上げや老朽化した旅館の再生事業など、実業家としても話題に
子どもが小学校に上がって、だんだん手がかからなくなるなかで、自分自身にも何か新しい夢や目標がないと、いつまでたっても子離れできないなと思い、4年前に中退していた母校に再入学という形で高校生になりました。
通信制の学校で、コロナ禍ということもあってリモート授業が中心でしたが、必修科目の課外授業でクラスの子たちと顔を合わせることもある。当時34歳だった自分からすると、周りは自分の半分の年齢で、思春期真っ只中のすごくかわいい子たち。半分親心というか、みんなをまとめようとしてウザがられたりもしましたね(笑)。体育の授業ではバスケとかバレーをするんですけど、34歳は急に走り始めたら筋とか痛めちゃうので、みんなより入念に屈伸したり。通信制だったので、中には私より年上の方もいらっしゃって、すごくすてきな環境でした。
お仕事とレポートの締め切りに、子どもの熱が重なってということもしょっちゅうでしたけど、どのくらい前から始めればいいのかとか、手の抜き方とか、傾向と対策が分かってからは効率よく進められるようになりました。夜だとついついスマホをいじってしまうけど、朝の4時とか5時とか、何も新しい情報がなく誰からも連絡が来ない、世間が止まっている時間に勉強をするとすごく集中できるんです。お仕事で東京に行くときも、子どもが小さいときは日帰りが基本。夜は子どもと一緒に寝て、朝に早起きして勉強して、子どもが起きてくる7時とかにごはんの支度をしてという生活リズムを続けています。
子どもと一緒に勉強して、自分も一緒に成長していく楽しさを知って、せっかくついた勉強の癖を終わらせたくないなと思って大学にも進むことを決めました。日本経済大学の芸創プロデュース学科ファッションビジネスコースというところに入って、ファッションと経営の勉強をしつつ、念願の会社を立ち上げたのが36歳のときです。
ずっとお洋服が好きでアパレル事業に興味があったんですけど、ファッション業界は毎年トレンドが替わって、長く着られるものってあまりない。自分が長く着ている服ってどんなものだろうと考えたときに、やっぱり古着屋さんで買った特別な一着だったり、人と被らないようなものだった。人と被らない特別な一着を作れば大事に使ってもらえるのかなと思って、一点物の古着のリメイクブランドを立ち上げたんです。リメイクなので、生まれ変わりとか再生という意味を込めて、ブランド名は「Style Reborn」。SDGSにもつながる事業なのかなと。
旅館事業の方はそれとは全然関係なくて、龍栄荘という旅館に出合ってしまったことがきっかけ。東京でお仕事のときに使う家があったんですけど、月に2~3回しか来ないし、着いたらまずは掃除から始めなきゃいけないので、その家を売ったお金で、最初は熊本にビルを建てようと思ったんです。エステとかネイルサロンのテナントが入った、きれいになれる商業ビル。でも、なかなかビルが見つからないし、熊本なのに案外高いなと思ったりして。熊本市内でも、もう少し郊外の方も見てみようと市内から30分以上離れた海沿いの方を探したら、その旅館に出合ってしまって。
もうひとめ惚れですよね。海に夕日が沈む景色が最高で、その時は旅館をするなんて思ってなかったんですけど、ここでエステとか、何か事業がしたいなと思って即決で購入したんです。ただ、すごくリーズナブルな値段で買ったはいいものの、ふたを開けてみたら漏水漏電シロアリのトリプルパンチで、改修費用は最低でも6000万円。それでも元オーナーのおじいちゃんから、この旅館がどれだけ地域に愛されていたか、結婚式場であり、七五三の場所でもあり、法事の場所でもあって……という話を聞いていたら、「私が守っていかないと!」という思いに駆られてしまって。一世一代の買い物でした。女将ではなくオーナーという形ではあるんですけど、「KAWACHI BASE -龍栄荘-」と元の名前も残して、みんなの笑顔が集まる場所にしていければいいなと思っています。
1歳だった子どもを抱えて熊本に戻ってから、震災があって、コロナがあって、高校大学に入って、起業してといろいろなことがありましたけど、芸能界に入ってからの10年にも負けないくらい、人生の中でも一番凝縮された10年だったんじゃないかなと思います。とても濃い、いい10年だったと思います。これから10年後はどうなっているんだろう。自分の背中を見せるじゃないですけど、20歳になった子どもには、チャレンジを恐れずに挑戦し続ける人であってほしい。私はこれから更年期とかも表れてくると思うし、ホルモンバランスの乱れとかいろんなことがあると思うけど、そういうものも乗り越えつつ、自分のペースでやっていけたらいいなと思いますね。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔)