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からだ・美容

「単なる乾燥」と侮ってはいけない唇の荒れ ピリピリとした痛みは要注意 医師が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:鬼沢 正道

気になる唇の荒れ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
気になる唇の荒れ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 冬から春先にかけて、唇の荒れが気になる方もいるかもしれません。単なる乾燥だと思って放置しておくと、実はウイルスが原因の感染症である可能性もあるようです。「アポロ美容外科」の院長として日々、患者さんの皮膚トラブルなどに接する鬼沢正道医師に、唇の荒れの原因や対策、重症化リスクなどについて伺いました。

 ◇ ◇ ◇

唇が荒れやすい理由とは

 唇(口唇)は、表面で皮膚のバリア機能の役割を果たす角層が薄く、脂や汗を分泌する腺がないので保湿機能の働きも低めです。そのため、顔のなかでも頬や額などとは違って、敏感で乾燥しやすい部位と言えるでしょう。加えて、食事など日常的に摩擦を繰り返す部位のため、唇は常に刺激を受けやすい状況にあります。

 唇が荒れる原因は、いくつかあります。最も大きな要因は、空気の乾燥、紫外線によるダメージの影響です。また、アレルギー反応の可能性も否定できません。使用している化粧品や歯磨き粉などの成分によるもの、または普段なにげなく摂取している飲食物によるアレルギー反応で、唇が荒れるといったことも考えられるでしょう。

 意外に見落とされがちなのは、食生活などの生活習慣の乱れです。これらも唇の乾燥に関係しており、とくに偏った食事をしていると、鉄分や亜鉛の不足によって唇が荒れるケースも散見します。

唇の乾燥を防ぐため日常的な対策が重要

 唇は、乾燥させないように、市販のリップクリームを使って普段からセルフケアしておくことが重要です。唇の荒れが進むと、皮がむけたり、ひびが発生したりすることがあります。無理に皮をはがしたり、舐めたりすることは避け、リップで保護してください。

 唇の荒れが進み、すでに保湿力を失っている状態にあると、市販の油性のリップクリームは水分を直接補充しているわけではないので、あまり状況が変わらないこともあります。その場合は、唇の荒れの背景に炎症が起こっている可能性もあるので、市販の抗炎症作用のある薬用クリームや、抗菌薬の軟膏などを使うことも視野に入れてください。

 また、栄養バランスの良い食生活、適度な運動や睡眠などの生活習慣を正すことも、唇の荒れを予防することにつながります。

長引く場合は、自己判断せず医療機関の受診を

 しかし、唇の荒れをいくら保湿しても改善しない、または長引く場合は、単なる唇の乾燥ではない可能性もあります。

 たとえば、唇やその周辺にピリピリした痛みや赤い腫れ、小さな水ぶくれがある場合は、口唇ヘルペスの疑いがあります。単純ヘルペスウイルスというウイルスで起こる感染症です。共有した食器やタオルなどからほかの人にうつる可能性があります。幼児や高齢者に起こりやすいといわれていますが、成人でも精神的・肉体的ストレスや疲労が溜まり、免疫が弱っているとかかりやすいので注意が必要です。

 このほか、保湿ケアをしても改善しない唇の荒れには、カビが原因の口腔カンジダ、糖尿病や胃腸障害といった疾病が潜むリスクも可能性として考えられます。幼児の場合は、血管炎である川崎病のリスクも。

 単なる乾燥と侮らず、唇の荒れに違和感があれば、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。

(Hint-Pot編集部)

鬼沢 正道(おにざわ まさみち)

美容外科医。1984年、茨城県出身。2020年、原宿に美容クリニック「アポロビューティークリニック」を開院。院長として、美容医療をメインにさまざまなジャンルの医療を提供するとともに、現在の医療の情勢や新技術などを患者さん目線でわかりやすく発信する活動を継続中。