食
知らないと恥ずかしい和食のマナー やってしまいがちなお箸のタブーを聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実

新生活が始まる春。かしこまった席で和食をいただく機会があるかもしれません。普段から食べ慣れていても、会食の席になるとマナーに戸惑うことも。汁物など椀物をいただく際、箸は、お椀を持ち上げる前に取るべきか、それともあとか、同時なのか、正しい作法はあるのでしょうか。うっかり恥をかかないための和食のマナーについて、元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
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お椀を先に両手で持ち上げる
和食では、ごはん茶碗や汁物などのお椀は、持ち上げて食べるのがマナーです。そこでお箸をどのタイミングで持ったら良いか迷うこともあるかもしれませんが、まずお椀を持ち、その後に箸を取る順番が正しい作法といわれています。具体的には、次のような順番で行います。

○お椀をいただく際の箸の取り方(利き手が右の場合)
1. お椀を両手で包み込むように取り上げて、左手の平にのせる
2. 右手の親指、人差し指、中指で箸の中央部をつまんで持ち上げる
3. 箸先を、椀を持った左手の人差し指と中指(または中指と薬指)の間に挟み込む
4. 右手を箸の上部から下に沿って滑らせるようにして、正しい箸の持ち方に替える
箸とお椀を置く際は、逆の手順で行います。まず箸先を、器を持った左手の指の間に挟み込み、右手を箸の上部から下に沿って滑らすようにして中央部をつまんで下ろします。その後、両手でお椀を置くと良いでしょう。
先に箸を持ってからお椀を手に取ろうとすると、箸先を周囲に向けてしまいがちです。箸先をほかの人に向けるのは和食ではマナー違反なので、気をつけましょう。汁物を飲む際は、箸先を椀の中に入れて、具を押さえながら飲みましょう。こうすることで、うっかり箸先を周囲に向けてしまうことを防げます。
また、お椀と箸をそれぞれ片手で同時に取ろうとするのもNGです。器や箸を落としやすいだけでなく、そもそもお椀を持ち上げる際は両手で包み込むように取り上げるのが作法なので、好ましくありません。
正しい箸使いを心がけよう

正しいお箸使いができない場合、マナー違反となるので注意しましょう。お箸2本をそろえて拳を握るようにして持つ所作は、「握り箸」と呼ばれるマナー違反です。攻撃的な意味を持つとされ、一緒に食事をする相手に悪い印象を与えてしまうことも。また、真ん中でお箸が交差してしまう「クロス箸」も、箸使いのタブーとされています。見た目にも乱雑な印象を与えるため注意しましょう。
お箸が上手に持てないという人は、ぜひこの機会に次の動きの練習をしてみましょう。お箸1本を、鉛筆を持つように人差し指と親指で挟み、中指を添えて上げ下げするだけです。箸先を中指で上げて、人差し指で下げていきます。基本的に箸は上の1本だけを動かして使うものなので、この動きができるようになると、箸の持ち方がスムーズになるでしょう。
このほか、大皿料理を取り分ける際に気をつけたいのは「逆さ箸」。箸の持ち手側で料理を取る行為です。取り箸がないとついやってしまいがちですが、マナー違反になります。箸で挟み上げた料理を別の箸で取るなど、箸同士で食べ物を受け渡す「挟み箸」もタブー。本来は遺骨を拾う際に行う所作です。
食事のマナーとは、周囲に不快な思いを与えず、食事を通して楽しいひとときを共有するための作法です。基本を押さえておけば、慌てず落ち着いて食事を楽しめるでしょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾