仕事・人生
中村江里子さん「とりとめなくおしゃべりをする時間が貴重」 80代でも第一線の母 変わってきた母娘の関係性
公開日: / 更新日:

国際結婚をきっかけにフランス・パリに住んで20年以上になる、フリーアナウンサーの中村江里子さん。日々、SNSでパリの日常を発信し、そのエレガントなライフスタイルは憧れの的になっています。インタビュー3回目は、家業やボランティア活動に精力的な母親への思い、50代になった自分との向き合い方などお話しいただきました。
◇ ◇ ◇
いつまでも新しいことに挑戦する母を尊敬
江里子さんの母方の実家が営む「銀座十字屋」は、銀座3丁目、銀座通りに面し、松屋銀座デパートの向かいという一等地にあります。2024年には創業150周年を迎えた老舗であり、現在は主にハープの普及に力を入れている楽器販売店です。母の千恵子さんが会長、江里子さんの弟が社長としてその歴史を継続しています。
「私の家族は”パーフェクト”」と江里子さんが自慢するのは、曽祖母や祖母も一緒に暮らす大家族。妹さんと弟さんの三人きょうだいも大の仲良しで、江里子さんが1人で海外に出ることにも進んで協力してくれたそうです。
千恵子さんは「銀座から音楽や文化を発信していきたい」という思いを持ち続けています。2024年に新たに完成したビルの最上階にあるハープのサロンや、7階のハープとフルートの教室を訪れ、多くの人にハープの魅力に触れてもらいたいと願っています。家業にとどまらず、ボランティア活動にも関わるなど、80歳を超えた今もなお精力的に活動するその姿には、敬服せざるを得ません。
「いつまでも新しいことに挑戦する母を尊敬しています。日本時間の夜の10~11時くらいに実家に電話をかけても、まだ仕事をしているのか帰宅していないこともあります。忙しすぎるのが心配ではありますね。母のエネルギーは敬服しますが、娘としてはのんびりする時間も持ってもらいたいと願うばかりです」
母娘二人旅は、楽しいけれどときどきイライラ
この10年ほどは、日本各地に母と一緒に旅をする雑誌連載を続けている関係で、母娘ふたりの時間を持つ機会が以前よりも増えたといいます。
「仲良しの母娘だけど、50代と80代だから、やっぱり一緒にずっといるとテンポも違うし、どうしてもイライラしてしまうこともあります。でも、なんといっても母がとてもうれしそうなので、日常を離れた旅ってとても良いなあと、毎回、この旅を楽しみにしている私がいます」

同じ部屋で寝たり、日常を離れていろいろな話をしたり、穏やかで愛おしい時間を満喫しているそうです。いつもは言えないことも落ち着いて話せるのが、旅ならではの醍醐味だとか。その様子や思いは、2025年4月に出版した「次、どこ行く? 星野リゾートをめぐる母娘旅」(扶桑社刊)にも綴られています。
「私は疲れてひたすら寝ているのですが、温泉好きの母は、早朝から温泉に行ったり朝日を見に散歩へ出かけたり、とにかく活動的な人です。なんとなく気になっていることなど、とりとめなくおしゃべりをする時間が貴重ですね」
若いときは、悩みを相談して母からアドバイスを受けることが多かった江里子さんも、今は逆に母から悩みを打ち明けられることも多くなってきました。江里子さんが「時代の変化についていくのが難しいのは私も一緒。でも、今だからこういう受け取り方も良いのよ」と助言することも多くなったのだそうです。
「80代で教室やサロンを新しくし、家族の歴史を自分がきちんと守っていかなければと頑張っている姿を見ると、もっと肩の力を抜いてと言いたいですね」