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「医者半分、ユタ半分」 外国人観光客が注目する意外な沖縄の文化 たどり着く“気づき”とは
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外国人観光客からも注目を集めるユタ文化体験

沖縄島北部には、失われつつある温かな原風景が残っています。やんばると呼ばれるそのエリアは、漢字では「山原」と書き、「山々が連なり、森が広がる地域」という意味があります。
そのやんばるの集落で最近、「ユタ文化体験」が外国人旅行者からの注目を集めています。サービスを提供しているのは、「やんばるホテル南溟森室」。宿泊だけでなく、宿泊客の目的に合ったアクティビティをアレンジして手配しています。
ユタ文化体験は、困ったことがあったらユタに相談するという沖縄の土着文化を、肌で感じてもらうもの。これまでにアメリカやインド、スペイン、ロシア、イギリス、マレーシア、イタリア、コスタリカ、ドイツからの旅行者が体験しました。そして、ある“気づき”にたどり着いたそうです。
その“気づき”とは、「ユタに依頼してまでご先祖様の声を聞こうとするほど、祖先と強いつながりを感じている人が沖縄にはたくさんいる」ということ。そのことに驚くと同時に、「自分も、命をつないでくれたご先祖の存在を意識して暮らそう」という意識へと変化していくそうです。
国籍や文化の違いを超えて共鳴する外国人観光客
やんばるの集落で生まれ育った、同ホテルの代表取締役の仲本いつ美さんは、「私たちにとって、ユタはご先祖様や土地の神様との連絡係で、身近な存在」だと話します。
「沖縄とは異なる文化や信仰のもとで暮らす外国人のお客様であっても、ご先祖様や土地の神様の言葉を伝えるユタと過ごす体験を通して、目に見えないものと人間のつながりを感じ取り、共鳴していただけます。そのことから、沖縄に根づくこうした感覚は、国籍や文化に関わらず、人類すべてが持つ普遍的な価値なのではないかと感じています」
自分自身の命の礎となっている先祖を崇め、自然を尊ぶ心を呼び起こすユタ文化体験。こうした感性は、人間なら本来、誰もが奥底に持っているものなのかもしれません。
2024年には、沖縄に200万人以上の外国人を含む、約1000万人の観光客が訪れました。ユタ文化の体験や、ユタが象徴するユニークな精神文化は、世界にも通じる沖縄の新たな魅力を私たちに教えてくれます。
(浅倉 彩)