Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

沖縄でチョコレート作り 目指すのは「世界一おいしい」ではなく、地域感あふれるチョコレート

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

沖縄で栽培されたカカオポッドを手にする、オキナワカカオ代表の川合径さん【写真:Hint-Pot編集部】
沖縄で栽培されたカカオポッドを手にする、オキナワカカオ代表の川合径さん【写真:Hint-Pot編集部】

 子どもから大人まで、年齢や性別を問わず愛されているチョコレート。近年では嗜好品としてだけではなく、原材料となるカカオの健康や美容効果も期待されています。しかし現在のところ、日本の店頭に並ぶチョコレートは、海外産のカカオで作られたものばかり。日本の気候がカカオ栽培に適していないため、国産カカオでチョコレートを作ることは難しいとされているからです。そんな常識を破ろうと、8年前に沖縄に移住。カカオ栽培から「沖縄県産素材100%」のチョコレート作りに挑戦する男性がいます。その思いとは? お話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

妻からもらったチョコレートがきっかけに

 沖縄の県庁所在地・那覇市から北へ車で約2時間。沖縄北部にはやんばると呼ばれる、世界自然遺産に指定された豊かな自然が多く残るエリアがあります。海とのコントラストが美しい“奇跡の森”。その一角を占める大宜味村で、カカオ栽培をして沖縄産チョコレート作りに挑戦しているのは、OKINAWA CACAO(以下、オキナワカカオ)代表の川合径さんです。

「沖縄という地から、この地域から生み出したものを世界のブランドにしていきたいんです」

 沖縄県は、世界の長寿地域「ブルーゾーン」として、イタリア・サルデーニャ島、アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカ・ニコジャ半島、ギリシャ・イカリア島とともに知られています。沖縄のなかでも、大宜味村は「長寿の里」として注目。川合さんはこの地に、工房兼カフェをかまえ暮らしています。

 関東で生まれ育ち、農業経験はなく、前職は経営コンサルタントだった川合さんが沖縄に移住してきたのは、2016年のことでした。きっかけは、現在からさかのぼること12年前の2012年に妻からもらったチョコレート。なにげなくパッケージを見ていた川合さんに「ひらめき」が降りてきたといいます。

「チョコレートの原材料となるカカオも、コーヒー豆と同じように産地があって、産地や品種によって異なる味や風味があるんだなと気づいたんです」

 もともと、地域づくりや産業創出に携わりたいという思いを持っていた川合さん。コーヒー栽培に適した地帯「コーヒーベルト」は、一般的に赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までのエリアですが、北緯26度の沖縄でもコーヒー豆の栽培が行われていることは知っていました。一方、カカオ栽培に適した地「カカオベルト」を調べてみると、赤道を中心に南北20度。その瞬間、川合さんは確信に近い感覚を抱いたといいます。

「沖縄でコーヒーができるなら、カカオもできるんじゃないか。沖縄のカカオでチョコレートができたらおもしろい。地場ブランドになったら地域づくりにも貢献できる」

沖縄素材を使ったチョコレート開発からスタート

 こうして「カカオとチョコレート」という、川合さん自身にとっても、沖縄にとっても未知の事業を開始することになりました。初めは周囲からポジティブな反応を得られないこともあったそうですが、何度も足を運び、川合さん自身の思いを丁寧に伝えていくうちに、理解者が増えていったといいます。

 カカオは、実がなるまでに数年単位の時間がかかります。川合さんは、チョコレートはカカオと素材のかけ合わせでできていることに着目。カカオ栽培と同時並行して、カカオ自体は海外産のものを使用し、かけ合わせるものを沖縄の素材にすることで、地域らしさを全面に押し出したチョコレートの開発をスタートしました。

「農業って、時間がかかるじゃないですか。カカオは実がなるまでに4~5年かかるんですよ。栽培に成功してから仕事を始めようって言っても、それは無理ですから。でもチョコレートなら、カカオを育てながら沖縄ブランドを先に作ることができるんです」