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「火を通したから大丈夫」は間違い 常温放置が怖い意外な食べ物 食中毒を防ぐには

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

フライパンで野菜炒めを作り置き(写真はイメージ)【写真:写真AC】
フライパンで野菜炒めを作り置き(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 気温が上がり、過ごしやすい気候になってきました。この春から、自炊を始めた方もいるでしょう。料理を多めに作っておき、翌日も食べることがあるかもしれません。しかし、作った料理を鍋のまま、フライパンのままで放置していませんか。常温で放置しがちな料理や、そのリスクについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

高めの室温で2~3時間放置すると菌は増殖

 暖かくなってくると、気になるのが家庭での食中毒です。とくにこれからの季節は、気温も湿度も菌の増殖にとっては好条件となるため、一層の注意が必要になります。

 細菌性食中毒の一般的な予防法として、「加熱調理」が挙げられます。そのため「生ものだけに注意すればいい」というイメージを持ち、家で料理を作った際に「火を通したから大丈夫」と、常温のまま放置している方もいるかもしれません。

 しかし菌の多くは、高めの室温(20度以上)で2~3時間放置すると、食中毒を発症するレベルまで増加するといわれています。加熱調理済みの食品であっても、食中毒は起こるのです。

 代表的な例として、カレーやシチューなどの煮込み料理が挙げられます。食中毒の原因のひとつとなるウエルシュ菌は、鍋の底など酸素が少ない部分で増殖しやすいのが特徴です。冷めている間に菌が増えていき、鍋のまま一晩放置しておくと菌が増える格好の環境に。ウエルシュ菌は熱に強い芽胞を作るため、再加熱しても十分に殺菌できず、食中毒を起こすリスクが高まります。

 食品事業者の食品の安全を確保するための衛生管理手順(HACCP)では、「調理後の食品は、調理終了後から 2 時間以内に喫食することが望ましい」とされています。家庭でできる対策としては、調理後すぐに食べない料理は、なるべく早く冷まし、2時間以内を目安に冷蔵庫で保存することを心がけてください。小分けにして浅く広い容器に移し替えると、冷却が早くなり、菌の繁殖を抑えやすくなるでしょう。

汁ものや水分が多い具材の炒めものも要注意

○チャーハン、焼きそば

 チャーハンや焼きそばなどは、高温で炒めて作るため、一見リスクがなさそうに感じますが、常温で放置しておくと食中毒の原因になることがあります。米や麺類などの穀物には、セレウス菌が繁殖しやすいです。

 熱に強い芽胞を作るので、加熱しても生き残りやすい特徴があります。一度に大量のごはんや麺類を調理して保存する際は、小分けにして、保冷材などを活用しながら速やかに冷まし、冷蔵庫に入れましょう。

○野菜炒め

 モヤシやキャベツなどの水分が多い具材で作った野菜炒めは、調理から時間が経過すると、水分が出やすくなります。そのため、火をしっかり通していても、常温で放置していると、菌が繁殖しやすい環境になり、食中毒のリスクが高まります。水分が出やすい食品を使っての炒め物は、これからの季節は作り置きするよりは、都度食べる分を作るほうが良いでしょう。余ってしまった場合は、フライパンに入れたままではなく浅く広い容器に移して粗熱を取って、保存容器に入れて冷蔵庫で保存します。

○汁もの

 みそ汁や豚汁、中華スープなどの汁ものも、つい鍋のまま放置してしまうことがあるかもしれません。カレーなどと同様に、とくに注意したいのが、ウエルシュ菌です。たとえば、朝作った豚汁を「夕食でも食べよう」とコンロに置いたままにしておくと、その間に菌が増えてしまう恐れがあります。見た目や臭いで変化がなくても、体調不良の原因になることもあるため油断は禁物です。一度で食べきれない場合は、浅い容器に移して早く冷まし、冷蔵庫で保存するようにしましょう。

再加熱はしっかりと行おう

 細菌の多くは10度以下(冷蔵庫内の温度の目安)で増殖のスピードは遅れ、マイナス15度以下(冷凍庫内の温度の目安)で増殖しなくなると考えられています。しかし、死滅しているわけではないので、室温に戻すと増殖を始めます。

 したがって、いったん冷蔵保存した料理を再び食べる際は、再加熱が重要です。電子レンジを使うのが便利ですが、加熱ムラに注意してください。しっかり加熱されていないと、菌が生きていて食中毒の原因になります。

 電子レンジのコツは、「加熱したら、混ぜる」を2~3回繰り返すことです。カレーや汁ものなどは、電子レンジよりも鍋でグツグツと煮込み、よく混ぜながら熱を通すようにすることをおすすめします。

 細菌性食中毒は、これから梅雨時期となる5~6月頃から増える傾向にあるといわれています。加熱調理した料理は、常温で放置せずに、適切に保存することを心がけましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾