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「給与が個人の能力の問題だけではないことは明白」 アメリカから日本を見て気づいた賃金格差の原因とは
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アメリカでは実績がなければ就職が難しい一方、日本では今も新卒一括採用が主流です。初任給アップの陰で、就職氷河期世代の不遇は続いています。妻の海外赴任に伴い、アメリカ・ニューヨークで駐在夫、いわゆる「駐夫(ちゅうおっと)」になった編集者のユキさん。この連載では「駐夫」としての現地での生活や、海外から見た日本の姿を紹介します。第24回は、新卒優遇と移民労働の問題から考える、日本の働く人たちの賃金格差についてです。
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日本独自の新卒採用の功罪
日本では、人手不足や大卒人口の減少もあってか、新卒の給与を引き上げる企業が多いようです。いいことのように思いますが、その一方で、これまで給与アップを抑えられていた既存社員のなかには、不平不満がある人もいるのではないでしょうか。
新卒一括採用の方針をとる企業が多い日本。最近では中途採用に力を入れている企業も増えてきているものの、まだまだ新卒が採用の中心である企業は多いでしょう。
これは日本が独特で、アメリカでは実績が重視されるので、キャリアのない新卒が就職で不利になることも多いのです。
とくに最近は、アイビーリーグ(ハーバード大学、イェール大学、コロンビア大学など、アメリカの東海岸にある8つのエリート校)を卒業した学生でも、キャリアがない場合、それに見合った就職先を見つけられずに四苦八苦しているという話を聞きます。
さて、日本で新卒が優遇されるなか、不遇なのが就職氷河期世代です。私自身、氷河期世代のど真ん中。当時、内定を得るのが大変で、とくに女性にとっては厳しかったようです。
有名大学を卒業した知人の女性たちのなかでも、総合職は難しく、一般職でようやく採用が決まった人や、なかなか仕事が決まらず1年休学して、翌年も就職活動を続けた人もいました。
氷河期世代が不遇をかこつのを自己責任という人がいますが、厚生労働省と文部科学省によると、今年3月に卒業した大学生の就職率は98.1%(4月1日時点)。就職氷河期である2002年の就職率は55.1%です。
どうしたら労働者の賃金が上がるのか

まだ会社に貢献していない新卒の給与が大幅に引き上げられることについて、給与が個人の能力の問題だけではないことは明白です。労働条件は、雇用者と被雇用者の需給バランスで決まります。
さて、アメリカでは今、トランプ政権が、世界中にトラブルの火種をばらまいています。
一方で、ドナルド・トランプ大統領に問題はあるにせよ(もちろんあるでしょう)、トランプ氏の掲げる不法移民排斥に対する政策が一定の支持を受けるのは、わからなくもないのです。
最低賃金が高騰化するアメリカですが、不法移民は最低賃金以下の賃金で働きます。雇用者にとってはありがたい存在ですし、不法移民にとっても働ける場があるのはありがたいことでしょう。
それで損をするのは、不法移民との競争にさらされる普通の労働者です。働き手が増えることで得をするのは誰なのか。そういったことを、日本でももっとよく議論すべきではないでしょうか。
氷河期世代で苦しんでいる人はとくにそうですが、自分の給与を上げたいのなら、移民労働者が増える政策について、もっと考えたほうがいいかもしれません。
(ユキ)