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昭和と令和で大きく違う ファッション用語の世代ギャップ

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

世代によっては通じない言葉も…(写真はイメージ)【写真:写真AC】
世代によっては通じない言葉も…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 あなたは「そのランニング、えもんかけに掛けて」と言われたら、ピンとくる世代でしょうか。時代の流れに沿って、変化していく言葉。とくに暮らしにまつわるアイテムの呼び名は変化が激しく、世代によってはまったく通じないことも。今や“死語化”しつつある言葉の数々を紹介します。

 ◇ ◇ ◇

「ランニング」「えもんかけ」とは?

 ランニングとは、ランニングシャツとも呼ばれ、主に白色の綿製のノースリーブシャツを指します。今でいう「タンクトップ」のことです。

 もともとは大正時代に海外から導入された運動着の一種。スポーツの普及とともに、広く着用されるようになり、次第に男性の肌着としても定着しました。昭和の夏というと、中高年の男性が「ランニングにステテコ姿」で過ごす光景を、思い浮かべる人もいるでしょう。

 一方、えもんかけは、漢字で書くと「衣紋掛け」です。衣紋とは、着物の後ろ襟の部分を指します。着物を保管するときに、この衣紋部分を吊るす形で干したことが、名の由来だそうです。

 洋服が日常着になった後もそのなごりで、人によっては衣類をかける道具を、「ハンガー」ではなく、えもんかけと呼ぶことがあります。今は、和服を着用する機会が減っているため、本来のえもんかけを持っている人は少ないかもしれません。

 つまり「そのランニング、えもんかけに掛けて」は「そのタンクトップ、ハンガーに掛けて」とすれば、現代の広い世代に伝わるといえそうです。

キャミソールに似た肌着「シミーズ」「スリップ」

 ちなみにノースリーブでいえば、「キャミソール」は、今もなじみがあるファッションアイテムです。タンクトップとの大きな違いは、肩ひもの幅。キャミソールは、肩ひもが細い特徴があります。もともとは女性用の肌着でしたが、今は、重ね着などおしゃれアイテムとして着こなすことが多いのではないでしょうか。

 近年、肌着類は「インナー」と呼ばれることが多いので、「シミーズ(シュミーズ)」や「スリップ」といわれて、ピンとこない世代もいるかもしれません。キャミソールに似ていますが、どちらも丈は長めで、腰から膝くらいまでを覆う長さです。シミーズは日常的に、スリップはワンピースやドレスなどと一緒に着用するなど、昭和に主流だった女性用の肌着です。

「チョッキ」も世代によっては通じない?

 さらに、ノースリーブつながりでいうと「チョッキ」も、世代によっては通じない言葉のひとつ。チョッキとは、シャツの上に重ねて着る袖なしの短い胴着を指します。今でいう「ベスト」のことです。フランス語に由来する「ジレ」と呼ばれることも。丈の長いロングジレは、おしゃれアイテムとしても人気です。

 なぜ、チョッキと呼ばれていたかは諸説ありますが、洋服が日本に伝わった際、直接シャツの上に着ることから「直着」と表現したのが語源とか。日本特有の呼び名として広まりました。チョッキというと、子どものころに肌寒い日の重ね着だった手編みのチョッキを思い出す昭和世代もいるでしょう。

 ランニングにえもんかけ、シミーズ、スリップ、チョッキ……。時代の流れとともに消えていったり、変わっていったりする言葉。世代によって通じる、通じないはあるものの、その言葉が使われていた時代や背景を共有していきたいですね。

【参考】
「服装大百科事典(増補版)」(服装文化協会編、文化出版局)

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先のイギリスで、社会言語・文化学を学んだことをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。昭和好き。
インスタグラム:tsurumarukazu