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「バナナは牛乳と一緒に食べないほうが良い」は本当? 通説の理由を栄養士に聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実

通年、店頭に並ぶバナナ。やわらかくて甘い味わいが特徴です。手で皮をむけばすぐに食べられる手軽さもあって、常備している方もいるのでは。スムージーやジュースにして飲んでいる人もいるでしょう。しかし「バナナは牛乳と一緒に食べないほうが良い」との通説があります。実際はどうなのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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カルシウムの吸収を阻害するシュウ酸を懸念?
栄養学の観点からいうと、熟したバナナと牛乳を一緒に摂取して問題はありません。そのうえで「バナナと牛乳の食べ合わせが悪い」といわれる理由には、バナナのシュウ酸の存在を気にしてのことと考えられます。
シュウ酸とは、ホウレンソウやタケノコなどに多く含まれる成分で、尿路結石のリスクを高めたり、鉄分やカルシウムの吸収を阻害したりします。ホウレンソウやタケノコを調理する際に、シュウ酸を減らすためにあく抜きが欠かせないのはこのためです。
バナナにもシュウ酸があり、牛乳に含まれるカルシウムと結合しシュウ酸カルシウムとなって、体に悪影響を及ぼすことへの懸念から「食べ合わせが悪い」といわれるようになったのでしょう。確かに未熟のバナナはシュウ酸が比較的多いといわれていますが、一般的に熟したバナナに含まれるシュウ酸はごくわずかです。
実際、牛乳と合わせてスムージーやジュースなどにする場合は、熟したバナナを使用するのが一般的です。熟したバナナは牛乳と一緒に食べても、心配することはありません。むしろ、両者を組み合わせることで、さまざまな栄養メリットが期待できます。
バナナと牛乳の栄養メリットとは
バナナは糖質を主成分としますが、日本食品標準成分表2020年版(八訂)を基に、バナナ1本(150グラム)の可食部のエネルギーを換算すると、84キロカロリーとなり意外に低めです。ミネラルやビタミンなどさまざまな栄養成分も含みます。
なかでもカリウムは、一般的な果物の中でトップクラスです。カリウムには体内の余分な塩分を排出して水分調整をする働きがあるため、むくみや高血圧が気になる人には良い効果が期待できるでしょう。また食物繊維も豊富で、とくに不溶性食物繊維が含まれています。便秘が気になる人にもおすすめです。
そのバナナに足りない栄養素が、たんぱく質やカルシウム。それらを多く含む牛乳を合わせることで、お互いの栄養素を補い合う効果が期待できます。
とくに、「食欲がわかない」「時間がない」などが理由で朝食を抜いている人には、手軽な朝ごはんとして、おすすめの組み合わせです。バナナの糖質は、最終的にブドウ糖に分解され、脳のエネルギーとして利用されます。たんぱく質やカルシウムを含む牛乳と一緒に摂取することで、朝の活動をサポートする頼もしい栄養源になるでしょう。
追熟させてから冷蔵庫へ 冷凍保存で長持ち
バナナは常温保存が基本ですが、暑い季節はあっという間に追熟が進んでしまいます。バナナの皮にシュガースポットと呼ばれる茶色の点ができたら追熟した証拠なので、そのタイミングで冷蔵庫に入れると良いでしょう。ただし、バナナは寒さに弱いので、1本ずつ分けてキッチンペーパーなどに包んでから、ビニール袋に入れて野菜室で保存してください。乾燥を防ぎ、冷気がバナナに直接当たるのを防げます。
冷凍バナナもおいしいです。追熟したけれど食べ切れないという場合は、輪切りにして冷凍専用の密封袋に入れ、冷凍保存しておくと長持ちします。冷凍した輪切りのバナナと牛乳をミキサーにかけると、シャリシャリとした食感も楽しめるでしょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾