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嫌がる男児を無理やり女性用トイレに…子の安全と自立、どう両立? 専門家は「自尊心を傷つける」と警鐘
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母親が男児を女性用トイレに連れていくのは何歳まで許されるのでしょうか。そんな問いが今、ネット上で大きな議論を呼んでいます。発端となったのは、ある男性が目撃した商業施設のトイレでの親子を巡る一幕。施設内にある児童館出入口そばのトイレで、「年長~小1くらい」の男の子が嫌がっているにもかかわらず、母親が女性用トイレを利用させようとしていたといいます。男性が「いや、その年なら男子トイレで良いだろう」とSNS上に見解をつづったところ、男児を育てる母親からトイレ内での犯罪被害を危惧する内容の反論が続出。逆に「女性用トイレに男児を連れ込むな」という女性からの反応も上がるなど、波紋が広がっています。投稿者の男性に、物議を呼んだ投稿の真意について聞きました。
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男児の女性用トイレ利用を巡る議論が白熱…発端となった投稿の意図とは
「今日、商業施設で年長~小1くらいの男児を女子トイレに連れて行っているママを見たな。いや、その年なら男子トイレで良いだろうと思う。入り口のそばから『大丈夫?』とか声を掛けながらとかでも。その他何か事情があるなら、すぐ横のファミリートイレが空いていたのだからそちらを使えばと」
先月22日、SNS上に投稿された商業施設での男児の女子トイレ利用を巡る目撃談。投稿は1000件を超えるリポスト、6000件以上の“いいね”が寄せられており、「さすがに未就学児一人でトイレは行かせられないかなぁ…」「男児ママへ。犯罪に巻き込まれる方が大変だから迷いなく連れてきてね。大丈夫だよ」「基本的なマナーがあるなら男児でも全然使って良いかと。男子トイレの治安と天秤にかけたら子どもたちの安全の方がずっと優先」など、子どもの安全を懸念する声が多く寄せられています。
一方で、「せめて小学生からは性別に合うトイレに行って欲しい」「男児を女子トイレに入れるなんて有り得ない。絶対に入れないで欲しい」「たとえ男児でも男は男」など、男児の女性用トイレ利用に抵抗を示す声も。両者は一歩も譲らず、議論は平行線をたどっています。
一連の議論の発端となった投稿者は、児童心理学を専門とする大学教員で、自身も男女の小学生2児を育てるシングルファザー。投稿について、「6~7歳くらいの男児が女子トイレへの入室を嫌がっていたにもかかわらず、母親が無理やり連れて行こうとしていました。施設には男女別のトイレだけでなく、ファミリートイレや多目的トイレも設置されていました」と状況を説明します。
児童心理学の専門家という立場から、投稿者は「自立心が芽生えた男児が自身の排泄行為を、知り合いのお友達や見知らぬたくさんの女の子、大人の女性に見られてしまったと思えば、大きなトラウマとなり自尊心が傷つく」と指摘。「男児が女子トイレ内で友達と出会い、学校で『男なのに女子トイレにいた』とうわさされれば、いじめにつながる恐れもありますし、『男なのに女扱いされた』と母親が自分の気持ちを受け止めてくれないことに落ち込む可能性もあります。子どもの自尊心を傷つけず、自立を促すためには、子の意見を養育者が受け止め、双方が折り合いをつけていく必要があります」と一連の議論とは違った角度からこの問題についての考えを口にします。
多くの懸念が寄せられた「犯罪の被害に遭う」という意見に対しては「これまでの悲惨な事件から『男子トイレ=殺人や性加害のある危険な場所』としての認識が強いことは分からないことではありません。しかし、警察庁の発表では、殺人や性犯罪の加害者は親族・知人・友人等がほとんどで、赤の他人から通り魔的に殺人や性被害に遭うことは決して多くはありません。もちろん、トイレ等の公共の場での犯罪に十分に注意を払う必要があることも事実ですが、一方でより注意が必要なのは、子どもとのよりよい関係性の構築ではないでしょうか」と投稿者。
あらためて、一連の反響については「『犯罪に巻き込まれる』というものの他にも、『女子トイレに男性である男児がいるだけで不快』『のぞき等の性加害が心配』など、さまざまな反応がありました。男児が仮に何らかの悪事をしようとした場合は、母親に注意をするよう促せばよいだけのことですし、男児の性別が男であることを理由として性悪的に子どもを評価し、性的ないたずらを女子トイレ内でするのではないかという見方は、子どもを社会で守り育てていくためには適切ではないと思います」と話しています。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)