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女子のパンツの中に手を…深刻な“幼児間の性暴力” 我が子が性加害をしていたら…親が取るべき行動は

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

男児の性欲はいつから? 女子トイレの利用年齢が議論に(写真はイメージ)【写真:写真AC】
男児の性欲はいつから? 女子トイレの利用年齢が議論に(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 母親と一緒に女性用トイレを利用する男児の年齢を巡り、ネット上で議論が起こっています。SNS上では男児親から「1人で男子トイレに行かせて犯罪に巻き込まれないか不安」「小学生までは大目に見てほしい」との声が上がる一方で、「何歳だろうと男が女子トイレにいるのは不快」「小さい男の子に個室をのぞかれた」といった一部女性からの拒絶の声も……。度々話題となる“男児の性欲”にまつわる議論ですが、子どもは何歳から異性の体に興味を持つのでしょうか。児童心理学の専門家で、児童相談所職員や小学校教員という経歴も持つ聖隷クリストファー大学の菅井篤助教に詳しい話を聞きました。

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母親と一緒に女性用トイレを利用する男児の年齢がネット上で議論に

 子育ての経験があれば、幼い子どもが「おっぱい」や「おちんちん」に興味を示すのはごく一般的なことのように感じます。性的なことへの興味はどの段階から生まれるのでしょうか。菅井助教は「いわゆる第二次性徴期の異性への目覚めと、幼児期の性的ないたずらでは、同じ性欲由来のものに見えても、分けて考える必要があります」と解説します。

「思春期の異性への興味は、いわゆる異性間の性的な愛情のスタートラインとなるものですが、幼児期は単純な興味関心です。性的なものにかかわらず、知らないものを知りたい、自分の体との違いを知りたいという好奇心に由来するもので、他の好奇心と区別する必要のないものです。個人差もありますが、だいたい物心ついたあたりから一定程度の興味は持っています。幼稚園や保育園の年長クラスまでは低い仕切りのついた共用トイレで、小学校に上がる段階で本格的に男女でトイレが分かれますが、分けられることで女子トイレや女の子の体を意識し始めるケースもあります」

 幼児期から小学校低学年頃までは、女性用トイレをのぞいたり、スカートめくりをしたり、性的な単語を連呼したりといった男児の姿を目にすることも……。性的な問題行動を起こしてしまう子どもの心理について、菅井助教は「前提として、子どもであっても性への好奇心はあって当たり前。大人はそれを理性で制御していますが、幼い子どもはそこまで感情をコントロールできません」と説明します。

「昭和の時代と比べると、幼少期からの性教育やマナー教育もかなり浸透してきています。5~6歳であれば、いけないことと知っていながら興味が勝ってしまうケースも多いと思いますが、一方でそのくらいの年齢は脳の発達にかなりの個人差があり、中には必ずしも悪いことだと理解できていない場合もあります。例えば、感情のコントロールができず、異性に抱き着くなどの触法行為に至ってしまうような大人であっても、発達に課題が見られる場合もありますよね。子どもも同様に、性教育は5歳だから、6歳だからと一律に年齢で区切らずに、その子に合わせたアプローチをしていく必要があります。多くの場合、成長していくうちにどこかでやってはいけないことだと気づくようになります」

 こうした行為をいたずらの範ちゅうとみるか、深刻な性加害への入口とみるかは、世代や性別によっても意見が分かれるところ。一方で、なかには執拗に相手の性器を触る、トイレに閉じ込めて排泄の様子を観察するなど、“幼児間の性暴力”と呼ぶべき事案も報告されています。実際、菅井助教も小学校教員時代、担任した1年生の男子児童が女子のパンツの中に手を入れるという事案に遭遇したことがあるそう。被害者の心に深刻な傷を残すこともあるこれらの事案には、どう対処していけばいいのでしょうか。

「性的な事案にかかわらず、他害をする、物を壊すなどの問題行動を見せる子どもはいます。原因はケースバイケースで、保護者の関わり方に問題があったり、持って生まれた気質や、脳がまだ発達途中で感情のコントロールができないという場合もあります。性加害は大人であれば刑法で処罰されるべき犯罪ですが、幼児の場合は罰を与えるよりも支援の目で見る必要があります。間違いを犯すことがあっても、決して罰を与えたり排除したりしてはいけません。被害者側からすると許せないと思うこともあるかもしれませんが、彼らにも発達に合わせて成長したり、学んだりしていく権利があります。幼少期に加害行為があったからといって、人権侵害をしていい理由にはなりません。

 もちろん、被害者のケアはより深刻で重要です。何をされたか分からない年齢の場合は『痛い』『恥ずかしい』という思いだけが残り、当時はそれほど気に留めていなくとも、後に大きなトラウマ体験となることがあります。長い年月の後、意味を理解した頃にフラッシュバックを起こしたり、解離症状やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症につながることもあります。ときには医療の領域からも、適切に対処していく必要があります」

 菅井助教が過去に担当した小学1年生のケースでは、加害児童の保護者に事実を伝えたところ、保護者がショックを受けて泣き崩れてしまったそう。性加害の場合、けんかやいじめといった他の加害行為以上に、大人が深刻な捉え方をしてしまう傾向があるといいます。当事者同士での解決に走ると、お互いが感情的になり、さらなるトラブルにつながるケースも……。間に教員を通すなど、ワンクッション置いた対応が重要だといいます。

「我が子が性加害をしていたと分かったとき、絶対にやってはいけないのは、親が取り乱して詰問すること。子どもは言語能力が発達しておらず、状況や気持ちをうまく説明できません。ましてや性に関することにはうしろめたさもあり、より聞き取りを困難にしてしまいます。まずは親が冷静になって、ちゃんと話を聞く場を整えてあげることが大切です。また、子どもたちにとっても非常にセンシティブな問題なので、当事者の子と親、先生など、ごく狭い関係性での解決にとどめることが重要です。安易にSNSやLINEで第三者に共有する行為は、子どもたちの健全な成長を妨げることにもつながるので慎むべきです」

 悪意を持った大人の性犯罪とは意味合いが異なる一方で、幼い子同士でも起こりうる性を巡るトラブル。加害者も被害者も、発達途中の未熟な子どもということを念頭に置き、処罰や排除だけではない、より柔軟な対応が求められています。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)