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「惜しい」で終わらせたくない─パリ育ちの感性で挑む、世界的アーティストの河原シンスケさんの伝統工芸改革

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

京丹後を舞台に、人と伝統をつなぐイベント構想が始動

日本での住まい、天橋立の自宅で【写真:荒川祐史】
日本での住まい、天橋立の自宅で【写真:荒川祐史】

 日本が世界に誇るべき伝統工芸を、より多くの人に親しんでもらう機会を作りたい――。いま、河原さんの頭の中には1つのアイデアが浮かんでいます。それは京丹後に伝わる伝統工芸、食文化、そして住環境としての魅力を伝えるイベントを開催すること。「好きになる、触れる機会を作りたいんです」と言葉を続けます。

「この地域は美しい自然はもちろん、伝統工芸もおいしい食材もたくさんある。最近では刀鍛冶をするために移住してきた若者もいるし、(富士酢で知られる明治創業の老舗・)飯尾醸造のお酢に魅せられたボルトガル人の鮨職人もいます。フランスから来た友人を、藤の蔓で作る藤織りや、キラキラした貝殻を糸として織り込む(螺鈿織りのパイオニア・)民谷螺鈿などに連れていくと、みんな大喜びしますよ。その様子を見た職人さんたちも喜んでくれますし」

 河原さん自身、天橋立での暮らしを通して生まれた人と人とのつながりや新たな発見から大きな刺激を受けているといいます。移住してきた自分を快く受け入れてくれた地域のためにできることをしたいと思い、最近では「イベントをやります」と公言し始めたそう。

「言えばやらないといけなくなるので(笑)。地域の人たちは『私たちでいいんですか?』と言うので、『ぜひぜひ。外から来る人のためだけじゃなく、住んでいるみんなが楽しくなるようなイベントにしたいので、手伝ってくれたらうれしい』と伝えています。住んでいる人が幸せそうであれば、ここに住みたいと思う人も増えると思うんですよね。

 天橋立は日本三景の一つでもあるけれど、『キレイでしょ』と偉そうにしていたらダメ。実際に足を運び、キレイだということを分かってもらう努力をしないと。伝統工芸もただ単に『どうだ?』と見せられても、『すごいですね』で終わってしまう。そうではなくて、見た人が『家にもあったら良いな』と思うような仕掛けがほしい。そういうワクワクするようなきっかけ作りや魅力の発信を、イベントではしていきたいですね」

 京丹後でのイベントを成功させることが、日本各地で受け継がれる伝統工芸や文化の担い手たちのヒントになるのではないかと考える河原さん。Hint-Potではその想いをサポートするため、京丹後地方で活動する伝統工芸や文化を紹介する連載をスタート。今後、京都エリアを拠点とする職人たちのインタビューを定期的にお届けします。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)