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健康診断で「B判定」の人が陥りやすい落とし穴…実は分岐点 「病気ではないから大丈夫」に潜むリスクとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

自分の健康状態を把握するためにも、健康診断は重要な機会(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
自分の健康状態を把握するためにも、健康診断は重要な機会(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 健康診断は、自覚症状のない病気の早期発見や、自分の健康状態を把握するための重要な機会です。結果票が届き、「A判定」が並んでいると安心しますよね。しかし「B判定(軽度異常・要経過観察)」だった場合、「病気ではないから大丈夫」と自己判断し、具体的な行動を起こさない人が少なくありません。本当にそのままで良いのでしょうか。健康診断の「B判定」の結果をどう受け止め、具体的に何をすべきかについて、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの安江千尋院長に聞きました。

 ◇ ◇ ◇

健康診断の「A判定」と「B判定」は何が違う? 判定の一般的な定義

 健康診断の結果は、私たちの体に起きている変化を教えてくれる大切なシグナルです。多くの健康診断機関では、結果をA~Dの段階で評価します。一般的な定義は以下の通りです。

○A判定:異常なし
 検査項目がすべて基準値内で、健康状態に問題がないと判断される状態です。

○B判定:軽度異常(経過観察)
 基準値からわずかにはずれているものの、すぐに病気とは判断されず、日常生活に支障がない範囲です。ただし、生活習慣の改善が望ましく、次回の健康診断で数値の変化を注意深く見ていく必要があります。

○C判定:要再検査・生活改善
 基準値からの逸脱が認められ、病気の可能性が否定できない状態です。医療機関での再検査や、積極的な生活習慣の見直しが推奨されます。

○D判定:要精密検査・治療
 病気の可能性が高く、より詳しい検査や治療が必要な状態です。速やかに医療機関を受診することが求められます。

「B判定」は、いわば健康状態の“黄色信号”です。今すぐ治療が必要なわけではありませんが、このサインを無視していると、将来的に「C判定」や「D判定」へと進行してしまう可能性があります。

「『B判定』=病気ではない」は本当? 放置の危険性

 検査値が基準値から少しだけはずれている「B判定」は、現時点では治療が必要な病気とは診断されず、生活習慣の見直しや経過観察で改善することが多いのが特徴です。しかし、「病気ではないから大丈夫」と自己判断で放置してしまうのは危険です。

「B判定」は「将来の病気への分岐点」です。軽度な異常が続くことで、気づかないうちに動脈硬化が進行したり、糖尿病や肝臓病、痛風といった本格的な病気へと発展したりするリスクがあります。大切なのは、この段階で自分の体が出しているサインに気づき、生活を見直すことです。

要注意! 「B判定」でとくに気をつけたい5つの検査項目とは

「B判定」のなかでも、とくに次の5つの項目は、生活習慣との関連が深いといえます。

・肝機能:アルコールの過剰摂取、肥満、脂肪肝など
・血糖:乱れた食生活、運動不足、体重増加
・血圧:塩分の多い食事、運動不足、ストレス、肥満
・脂質:高脂肪な食事、運動不足、飲酒、肥満
・尿酸:飲酒、肥満、プリン体の多い食事

 これらの項目は、食事や運動、飲酒習慣を見直すことで正常値に戻る可能性が高いものです。しかし、「B判定」であっても以下のような自覚症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

・動悸、息切れ、むくみ、胸痛、ひどい疲れやすさがある
・尿に血が混じる、むくみがひどくなるなど、腎機能の異常が疑われる
・血糖値の異常に加え、強いのどの渇き、多尿、急激な体重減少がある
・肝機能の異常に加え、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、強い倦怠感がある

「B判定」という結果に安心せず、ご自身の体調に変化を感じたら、放置せずに専門医に相談することが、病気の早期発見・早期治療につながります。

30~50代は要注意 「B判定」を「A判定」に戻すためのセルフケア

 働き盛りの30~50代は、仕事のつきあいやストレス、運動不足などから、とくに「B判定」が出やすい世代です。「『B判定』は“まだ戻せる”という体からのサイン」ととらえ、生活習慣の改善に取り組みましょう。

 次の健康診断で「A判定」を目指すために必要なセルフケアは、まず食事内容の見直しです。高脂肪食や過剰な炭水化物、塩分を控えめに。野菜、魚、大豆製品を意識して増やしましょう。

 適正体重の維持も大切です。「肥満は万病のもと」といわれます。ご自身の身長からBMI「体重(キロ)÷(身長(メートル)×身長(メートル))」を計算し、18.5~24.9の範囲を目指しましょう。定期的な運動も重要です。週に150分以上の有酸素運動(ウォーキングや自転車など、少し汗ばむ程度)を目標にすると良いでしょう。

 もし、毎日飲酒する習慣があるなら、週に2日以上の「休肝日」を設け、節酒を心がけてください。

 また、質の良い睡眠とストレス管理も欠かせません。6~7時間程度の睡眠時間を確保し、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。

 健康診断の「B判定」は、決して無視して良い結果ではありません。むしろ、本格的な病気になる前に生活習慣を改善できる最後のチャンスととらえ、ご自身の健康と向き合うきっかけにしてほしいですね。

◇安江千尋(やすえ・ちひろ)
防衛医科大学校医学科卒業。がん研有明病院下部消化管内科副医長を経て、現在は天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。わかりやすく丁寧な診療を心がけ、地域医療に従事している。

(Hint-Pot編集部)