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実は「白身魚」のシャケ 塩鮭の「甘口」と「辛口」の違いとは 皮も食べるべきかを栄養士に聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実

日本の食卓になじみがあるシャケ。スーパーマーケットなどで塩鮭を購入する際に、パッケージに「甘口」「辛口」と書いてあるのを見かけますが、何が違うのでしょうか。甘口は甘い味のもの? また、焼きシャケの皮は食べるべきなのでしょうか? いまさら聞けないシャケの豆知識を、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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甘口と辛口の違いは、味ではない
塩鮭の甘口と辛口は、味の甘さや辛さではなく、塩分濃度の違いを表しています。シャケを塩水に漬けて保存性を高めたもので、販売元によって違いがありますが、一般的に甘口は塩の濃度が3%未満、辛口は6%以上が目安です。3~6%未満のものを「中辛」と呼ぶこともあります。
昔は塩分の高い辛口が主流でしたが、冷蔵・冷凍技術の進化や、健康志向も高まった現代では、甘口の塩鮭が多く流通するようになりました。塩分摂取を控えたい人や子どもなら、塩分控えめの甘口を選んだほうが良いでしょう。
塩辛さが気になる場合は、塩鮭に「呼び塩」をすると塩分が抜けます。呼び塩とは、食材を塩分濃度の低い水に浸すことで、食材から塩を抜く昔ながらの方法です。「塩で塩を呼ぶ」ことから呼び塩といい、「迎え塩」と呼ぶこともあります。
まず、袋に1~1.5%濃度の塩水を作ります。目安は、水400ミリリットルに対して塩小さじ1の塩水が、およそ1.2%です。塩鮭を入れて袋の口を縛り、冷蔵庫で5時間おきます。取り出したら、水気を拭き取って焼きましょう。
シャケの皮は栄養成分が豊富
塩鮭の調理といえば、焼いて食べることが多いでしょう。ほど良い塩味がついた皮も食べるかどうかは、好みが分かれるところです。苦手だと皮を残してもマナー違反にはなりませんが、栄養の観点から、シャケの皮は食べたほうが良いといえます。
シャケの皮にはビタミンA、D、Eをはじめ、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。さらに「フィッシュコラーゲン」と呼ばれる良質なコラーゲンも。皮のすぐ下の脂質は、オメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が多くあり、脳の活性化だけでなく、動脈硬化などの生活習慣病の予防が期待されています。
シャケの皮のふにゃふにゃした食感が苦手な人は、小麦粉や米粉、片栗粉などをまぶし、油を薄くひいたフライパンなどで両面を焼くと、皮もカリッとおいしく仕上がります。
ただし、焦げすぎた皮を食べるのは控えましょう。発がん性があるとされるヘテロサイクリックアミンは、たんぱく質を多く含む食品を高温で加熱した際に生成され、魚の焦げにも微量含まれます。
シャケは白身魚 赤色は色素
身の色から誤解されやすいですが、シャケは白身魚に分類されます。赤い色は、アスタキサンチンと呼ばれるカロテノイド系の色素によるものです。これは、アスタキサンチンを含むプランクトンのオキアミなどをエサとして食べるため赤くなるといわれています。強力な抗酸化作用があり、生活習慣病予防、老化防止などが期待されます。近年、美肌に良いと注目され、化粧品に配合されるようにもなりました。
このほか、シャケの身の栄養の特徴といえば、皮と同様にDHAやEPA、さらにたんぱく質、脂質、ビタミン類などをバランス良く含みます。
塩加減の違いを知って、甘口や辛口を選び分けましょう。皮までおいしく食べれば、シャケの栄養を丸ごと摂取できます。日々の食卓の頼もしい味方として、上手に取り入れてみてください。
(Hint-Pot編集部)