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大根とシラス 食べ合わせが悪いのは本当? 真相を栄養士に聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実

春が旬のシラス。大根おろしと合わせた「しらすおろし」は手軽にできて、さっぱりとした味わいがおいしい一品です。しかし、シラスと大根の組み合わせについて、相性が悪いので一緒に食べないほうが良いといわれることがあります。それはなぜでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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大根とシラスの相性が悪いといわれる理由
大根とシラスの食べ合わせについて、相性が悪いといわれることがありますが、結論としては一緒に食べても問題ありません。食べ合わせが悪いといわれるのは、大根のリジンインヒビターという成分が、シラスに含まれる必須アミノ酸のリジンの吸収を妨げるとされるためです。
リジンとは、健康的な生活を送るうえで欠かすことができないたんぱく質の構成成分のひとつ。体内では合成されない必須アミノ酸のため、食品から摂取しなければなりません。体の成長や肝機能の強化、集中力の向上に役立ち、免疫機能の維持やエネルギー代謝をスムーズにする働きも注目されている成分です。リジンが不足すると疲れやすくなり、肝機能の低下、血液中のコレステロール値の増加などが起こる可能性も指摘されています。
しかし、大根とシラスを一緒に食べたからといって、リジンの摂取量が不足し、健康に害を及ぼすことにはなりません。リジンはシラスに限らず、主にたんぱく質を多く含む魚介類、肉類、牛乳やチーズなどの乳製品、納豆や豆腐などの大豆製品など、幅広い食品に含まれているからです。バランスの良い食生活を送っていれば、しらすおろしを食べたことで不足する心配はありません。
しらすおろしを食べる際、もしリジンの摂取が気になるのであれば、大根おろしを電子レンジで加熱すると良いでしょう。リジンインヒビターは熱で活性を失うため、リジンの吸収が妨げられなくなります。
大根とシラスの組み合わせが良い面もある
むしろ大根には、シラスに含まれるカルシウムの吸収率を良くするビタミンCが含まれています。骨の健康が気になるなら、良い組み合わせです。また、でんぷん分解酵素のアミラーゼやたんぱく質分解酵素のプロテアーゼも含まれ、胃腸の負担を軽減する効果があるため、リジン以外のシラスに含まれる栄養成分の消化吸収をサポートしてくれるでしょう。
ちなみに、リジンの吸収を優先して大根おろしを加熱すると、熱に弱いビタミンCやアミラーゼは失われてしまいます。
それぞれの食材が持つ栄養の力を生かそう
シラスとは、主にマイワシやカタクチイワシなどの稚魚の総称のことです。卵が孵化してから1~2か月、体長が約2センチまでのものをいいます。スーパーマーケットで通年見かけるので旬がわかりにくいですが、おいしい季節は春や秋。これから出回る「春シラス」は、やや小ぶりでやわらかな食感が特徴です。
シラスは、骨や内臓を気にすることなくそのまますべてを食べることができる、栄養価の高い食材です。豊富なカルシウムのほか、たんぱく質やビタミンD、ビタミンB12、亜鉛なども含みます。
こうした栄養面から考えると、シラスと大根の食べ合わせが悪いと一概には言えません。バランスの良い食生活を心がけながら、それぞれの食材が持つ栄養の力を活かして、日々の食卓をもっと豊かにしていきたいですね。
(Hint-Pot編集部)