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「思い込みって怖いな…」 シンガポールで気になった飲料の“表示” 日本人女性が驚いたこととは
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海外で暮らしていると、日本にはないものに遭遇する機会があるでしょう。その国での“当たり前”に驚くこともしばしば。夫の仕事でアメリカからシンガポールへ移住した、フリーアナウンサーの荒木優里さん。新たな環境で発見した、日本との違いを綴ります。今回は、日本では見たことがない飲み物のラベルについてです。
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飲料のパッケージやカフェのメニューに表記されたアルファベット
シンガポールに住み始めてから、スーパーマーケットやカフェで気になっていた、謎の記号があります。それは、ペットボトルのラベルや、ドリンクメニューの横に書かれた「A~D」のアルファベットと数字です。最初は「なんの目安だろう?」と不思議に思っていたのですが、これは「Nutri-Grade(ニュートリグレード)ラベル」と呼ばれる、飲料の砂糖とトランス脂肪酸含有量を示すものだと知り、思わず感心してしまいました。
シンガポールでは2022年12月から、市販される一部の飲料にニュートリグレードラベルが導入されました。対象には、缶やペットボトルなどのパッケージ飲料、さらに飲食店で提供される一部のドリンクも含まれます。
その背景にあるのは、糖尿病などの生活習慣病の予防といわれています。シンガポール保健省(MOH)の調査によると、国民が摂取する糖分のうち、なんと約50~60%が飲料からというデータもあり、国を挙げて健康意識を高めようとしているのです。
表示内容はとてもシンプルでわかりやすく、飲料の糖分と飽和脂肪の含有量に応じて、A(最も少ない)~D(最も多い)の4段階で表示されています。さらに、Aは緑、Bは黄緑、Cは黄色、Dは赤といった色分けも。
AやBに該当する商品の場合は任意ですが、CとDは表示が義務づけられています。ミネラルウォーターなどには見られませんが、シンガポールに売っている清涼飲料水やフルーツジュースなどには、ほとんどの場合、表示されています。しかも、Dランクの飲料には広告規制もかかるそうで、健康対策への本気度がうかがえます。
シンガポールでは甘い飲み物が好まれる傾向が
実際、スーパーで飲み物を選ぶときに「これはCか……」と、つい手が止まることが増えました(笑)。たとえば、果汁100%ジュースはヘルシーなイメージがありますが、意外にCランクが多く「思い込みって怖いな……」と実感することも。また、私は甘い炭酸飲料が大好きなのですが、「D・糖度11%」の赤ラベルを見かけると、自然と飲む頻度を考えるようになりました。
シンガポールには独自の飲み物文化があり、屋台街などでよく見かける「コピ(kopi)」「テ(teh)」などのローカルコーヒーや紅茶は、とても甘いです。初めて飲んだときは「これだけでお腹いっぱいになりそうだな……」と衝撃でした。国民的に甘いドリンクをよく飲む文化があるからこそ、こうした栄養表示への取り組みが進んでいるのかもしれません。
気軽に手に取る飲み物だからこそ、日常の中で健康について意識するきっかけをくれる表示に、私はちょっと感動してしまいました。
(荒木 優里)
荒木 優里(あらき・ゆり)
米ニューヨーク州在住のフリーアナウンサー。慶應義塾大学を卒業後、KSB瀬戸内海放送、テレビ埼玉で局アナとして勤務し、報道番組のキャスターや情報番組の中継リポーターなどを担当。2022年夏に渡米し、現在は初めて体験する海外生活での奮闘ぶりを日々発信中。
