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安い乾電池に潜む“落とし穴”…値段と性能は比例する? 高額モデルとの違いを国内大手2社が解説
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9月1日は「防災の日」。地震や台風など、いつ発生するか分からない災害に対し、もしものときの備えを見直すいい機会です。災害時に役立つ身近な備えの一つが乾電池のストックですが、アルカリやマンガン、リチウムなど、さまざまな電池の中からどれを選べばいいか分からないことも……。物によっては同じ単3形電池で10倍近い価格差の製品もありますが、何を基準に選べばいいのでしょうか。今さら聞けない乾電池のあれこれについて、国内メーカー大手の東芝、パナソニックの担当者に話を聞きました。(取材・文=佐藤佑輔)
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一般的な家庭用乾電池はマンガン、アルカリ、リチウム、ニッケル水素の4種類
一般的な単1~単4形の家庭用乾電池は主に、安価で電力が弱いマンガン電池、電力が強く国内では最も多く流通しているアルカリ電池、よりハイパワーで長持ちする1.5Vリチウム電池、充電式で繰り返し使えるニッケル水素電池の4種類があります。
最も歴史が古いマンガン電池は、電力が弱く電池が切れるのも早いため、時計やテレビのリモコンといった消費電力の少ない製品への使用が主流。他の電池と比較すると液漏れしやすいという欠点があります。1990年代に流通量でマンガン電池を上回ったアルカリ電池は、今や幅広い製品に利用されており、売り場面積も広く、最も身近な電池の一つ。リチウム電池というと充電式のモバイルバッテリーが有名ですが、低温に強いという特徴があり、カメラやドアホンなど屋外での使用を目的にした乾電池も販売されています。充電式乾電池は家庭用のコンセントで繰り返し充電して使え、経済性をうたうメーカーの多い商品です。
近年は家電量販店や街の電気屋の他、コンビニや100円ショップでも販売されている乾電池。流通量の多い単3、単4形電池では、同じ8本入りのアルカリ電池でも100円で売られているものから1000円以上するものまで、大きな価格差が存在します。安い製品に危険性などはないのでしょうか。東芝ライフスタイルの担当者が解説します。
「国内で販売されているすべての電池は日本産業規格(JIS)に準拠しています。安全性の面では厳格な基準をクリアしており、安い電池であっても危険ということはありません。では、高額な製品との違いは何かというと、原材料の違いなどによる放電性能と保存期間。分かりやすく言えば、高い電池ほど使っていても保管していても長持ちするということです。ただ、必ずしも価格に比例して長持ちするかというと何とも言えません」
物価高が続く昨今、乾電池1つ買うにも少しでも経済的でありたいものです。乾電池そのものは安いからといって危険なものではないですが、使い方には要注意。安い電池ばかり買っていると交換頻度が増したり、さまざまな種類の電池が混ざったりということも起こりますが、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。
「いろんな種類の電池を混ぜて使うと、電池が切れるタイミングがバラバラになりますが、この状態は過放電を起こしやすく、液漏れが発生するリスクが高まります。過放電は電池を使い切るまで使用することで発生するので、製品の電池交換ランプが点灯したら、まだ電池が残っていても使い切る前に交換するのがおすすめです。家庭内のさまざまな製品の電池を信頼できる1種類に統一した方が、こういったリスクを防げるという面はあるかと思います」(同社担当者)
2017年、「世界一長もちする単3形アルカリ乾電池」としてギネス世界記録(TM)に認定されたのが、パナソニックが販売するアルカリ電池のフラッグシップモデル「EVOLTA NEO」。同社の担当者は、普段使いだけでなく、防災の観点からも同製品の備蓄を強く勧めます。
「やはり、防災備蓄用には保存期間の長い製品をおすすめします。大型の懐中電灯は単1形電池を使用するものが多く、災害時には単1形電池の需要が高まりますが、まずはご家庭の製品がどの電池を使っているか確認することが大切です。汎用性のある単3形乾電池の場合、目安となる3日分の備蓄量は1人あたり17本。内訳は通信・情報収集に欠かせないスマートフォン充電用が12本、明かり専用に3本、ラジオ用に2本で、3人家族であればラジオは共通として3日間で47本という計算になります。『EVOLTA NEO』は保存期間10年(単1形~単4形のみ)となっておりますが、保管場所や保管温度によっても異なるので乾電池も非常食と同じように使った分を買い足していくローリングストックがおすすめです」
日常的なスマートフォンの充電で普及している充電式のモバイルバッテリー(リチウムイオン電池)は、乾電池に比べると自然放電量が多く、全く使用していなくとも半年に1回は充電する必要があるなど、災害備蓄には不向きな特性があります。日常生活のみならず、今や災害時にもなくてはならないスマホを安心して使うためにも、乾電池式のモバイルバッテリーや明かり専用の懐中電灯など、日頃からもしもの備えについて考えておきたいですね。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)
