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日本で問題の外国人による万引き 「逮捕はめったにない」 常習犯も出禁で終わるアメリカの実情「日本の敬意を払う文化は…」
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日本では、外国人観光客の数が増えるなか、外国人による万引きが問題になっています。さまざまな対策がとられているようですが、高品質なものを手に入れ、海外で売り飛ばすために集団で協力する事例も。犯罪率の高いアメリカでは、万引き防止のためにどのようなことが行われているのでしょうか。6月下旬からアメリカ・ロサンゼルスに住むYoさんが、アメリカ暮らしの実情を綴るこの連載。第6回は、アメリカのスーパーマーケットの実態についてです。
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万引きの目撃は「しょっちゅうある」
ある日、スーパーの入り口で「私は何もしていない!」と叫ぶ女性を目撃しました。目の前には屈強な警備員が2人。店から出ようとしたところを呼び止められたようです。女性は複数の商品を脇に隠すように抱え、警備員の隙間を突破しようと、繰り返し試みていました。
しかし、警備員は両腕を体の後ろに組み、手を出さぬよう体の前面だけで女性の行く手を阻みます。真偽は不明ですが、どうやら女性の万引きを疑っている様子。その後、女性を店の奥に連れていきました。
筆者のホームステイ先の長男は、ホテルの警備員として働いています。スーパーの万引きについて聞くと「しょっちゅうある(笑)。警備員ではなく客としてだけど、数え切れないほどね」と教えてくれました。筆者が利用するアメリカのスーパーやホームセンターには、どこも入り口に警備員が常駐しています。
「警備員が、追いかけながら戻ってくるように大声で叫んだり、店から出ようとする客の商品を取り返してから追い出したりする場面も見た。警備員は盗みそうな人を注意深く見ている。スーパーの近くにはホームレスがたくさんいるんだけど、彼らは店に入って万引きをする可能性が高いから、より注意を払っているね」
もちろん初犯で発覚するとは限らず、常習犯として目をつけられてから捕まることが多いそうです。
「店は記録を取っている。もし彼らが何日かに分けて盗んだ場合、盗んだものの値段を合計するんだ。1000ドル(約15万円)か2000ドル(約30万円)以上を盗んだ場合、逮捕されるか出入り禁止になる。5000ドル(約74万円)くらい盗むやつもたまにいるよ」
「逮捕はまれ」 アメリカの万引き対策とは
しかし、店に捕まっても“おとがめなし”が多いそう。件数が多いため、何度も警察とやりとりをするのが手間なのかもしれません。
日本なら警察に突き出され、場合によっては仕事を失いかねないでしょう。アメリカでは「軽微な罪なら、職を失うまではいかないかもしれない。けど、大量に盗んだ場合、仕事はクビになる可能性が高くなる」といいます。
アメリカのスーパーでは、高価な商品だけでなく、歯磨き粉などの日用品などが並ぶ棚にもカギがついています。また、スタッフが出口で、セルフレジ利用客のレシートと実際に買った商品の照合を行う場合も。こうしたさまざまな対策がとられているものの、万引きは日常的にあるのが現状のようです。
「アメリカでは盗難、破損、紛失の数があらかじめ計算に入っていて、ある程度の損失は覚悟しているんだ。損失額を把握し、備えることができる。日本の社会は信頼に基づくシステムがあるらしいね。もともとは外国人が少ないし、それぞれの価値観が似ているからできるんだと思う。
でも、いろんな背景を持った人が集まるアメリカには、同じ価値観がない。相手に敬意を払ったり、年長者を敬ったりするような日本の文化は、アメリカではそんなに一般的じゃないんだ」
日本では、治安を保つための感覚が浸透していて、人々が安全に暮らすためのルールやマナーが自然と守られてます。だからこそ、“性善説”に基づいたようなシステムも成り立つのでしょう。日本の当たり前は、実は世界から見れば特別で、誇るべき文化なのかもしれません。
※1ドル=約147.6円で換算(2025年8月6日現在)。
(Yo)
Yo(ヨウ)
新聞社に5年、ネットメディアに6年勤め、スポーツを中心に取材・執筆・編集活動をしたのちに退職。30代半ばでアメリカ・ロサンゼルスに拠点を移した。大学時代はバックパッカーとしてアジア、南米を放浪。仕事を含めて20か国近く訪れたものの、意思ばかり伝えてリスニングが苦手な一方通行イングリッシュに終止符を打つべく、英語習得にも励んでいるところ。
