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カレーでよく見る「ナン」はインドにない? 三角形も日本独特 意外に知らない“本場”の事情とは

公開日:  /  更新日:

著者:中谷 秋絵

インドにカレーは存在しない

「インドでは3食、カレーを食べるの?」

 友人や知人からよく聞かれますが、この質問は明確ではありません。なぜなら、インドにカレーという料理は存在しないから。

 カレーという言葉は、南インドの言語であるタミル語で、スープやおかずを指す「カリ(kari)」に由来するという説があります。

 インド料理がイギリスなどのヨーロッパに伝わり、小麦粉を使ってとろみをつけて煮込み、シチューのような形状になったものをカレー(curry)と呼ぶようになりました。これが日本に伝わったとされています。

 そう、私たちが普段「カレー」と呼んでいるものは、イギリス経由でやってきたのです。

 インドでは、パラク・パニールやサンバル、ラッサムなど、料理ごとに固有の名称があります。

北インド料理のダール・マッカニー。ダール=豆、マッカニー=バターの意【写真:中谷秋絵】
北インド料理のダール・マッカニー。ダール=豆、マッカニー=バターの意【写真:中谷秋絵】

 ただ、逆輸入的な形なのか、観光客向けのレストランでは「○○ curry」と表記してある場合もあります。

地域によって異なる多様なインド料理

 日本食は、しょうゆ、みそ、酒、みりんなど基本の調味料を使って調理しますよね。インド料理も同じです。基本はガラムマサラやターメリック、コリアンダーなどの多様なスパイスを使ってバラエティ豊かな料理を生み出しており、地域ごとに特色があります。

 インド料理の特徴を北と南でおおまかに分けると、北は小麦粉食、南は米食がメインです。ご紹介したチャパティを食べる習慣があるのは北の地域で、南ではあまり食べられません。ほかにも、北インドはナッツやクリームを使ったとろみのある料理が多いのに対して、南インドはトマトやタマリンドを使用した酸味のあるものや、スープ状のサラッとした形状の料理が多いのが特徴です。

南インドの軽食、イドゥリ。米を発酵させて作る、酸味のある蒸しパンのような食感【写真:中谷秋絵】
南インドの軽食、イドゥリ。米を発酵させて作る、酸味のある蒸しパンのような食感【写真:中谷秋絵】

 南北に限らず、州ごと、地域ごとに特色ある料理が存在します。近年では、日本でも「ゴア料理」「チェティナード地方の料理」など、地域の料理を出すマニアックなお店も増えてきており、ますますインド料理ブームが加熱していることを感じます。

 深すぎる“インド料理沼”に一歩足を踏み入れたら、その魅力から抜け出すのは至難の業かもしれません。

(中谷 秋絵)

中谷 秋絵(なかたに・あきえ)

取材ライター。新卒3年で心を病み、インドにバックパッカーの旅へ。インドの寛容さに救われ、日系旅行会社で働きながら約2年滞在。その後もたびたびインドを訪れている。2021年よりフリーランスのライターに。自身のインド経験を綴った「どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術」(ANU WORKS出版刊)など、2冊の電子書籍を出版。インドのダンスも踊っている。