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「スーツケースをホテルに置いて帰国」 英紙が報じた日本の“ちょっと変わった”観光問題 円安とお土産文化が生む新たな課題とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

空港の出発ロビーでスーツケースの荷物を詰め替える外国人観光客(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
空港の出発ロビーでスーツケースの荷物を詰め替える外国人観光客(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 駅の構内や空港など町の至るところで、大きなスーツケースを2つも3つも転がしながら移動する外国人観光客を見かけることが増えました。階段の前で立ち往生したり、改札を通るのに苦労したりする姿は、今や日本の日常風景の一部となっています。そんななか、英紙「ミラー」が、日本で起きている“スーツケース放置問題”について報じ、話題を呼んでいます。

 ◇ ◇ ◇

9月の訪日外客数は過去最高の326万人超

 訪日外客数の増加はとどまるところを知りません。日本政府観光局の発表によると、2025年9月の訪日外客数は326万6800人で、前年同月比13.7%増となりました。9月として過去最高を更新。9月までの累計では3165万500人となり、過去最速で3000万人を突破しています。

 こうした観光客の増加に伴い、これまで想定していなかった問題が次々と表面化しています。オーバーツーリズムによる混雑や騒音問題はよく知られていますが、それとはまた違った問題が発生しているようです。

ホテルや空港に放置される大量のスーツケース

 同紙によると、日本を訪れる観光客が、使用済みのスーツケースをホテルや空港に置き去りにする事例が相次いでいるといいます。手荷物転送会社の共同CEOが同紙に語ったところによると、費用負担や業務の混乱、さらには安全面での懸念も生じ、深刻な事態になっているとのことです。

スーツケースを持ち運ぶ外国人観光客(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
スーツケースを持ち運ぶ外国人観光客(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 背景にあるのは、円安と日本のお土産文化の組み合わせです。円安により外国人観光客の購買力が高まった結果、大量のお土産を購入。持参したスーツケースに入りきらなくなり、現地で新しい大型スーツケースを購入し、元のスーツケースは超過料金を避けるために放置していくのです。

 大阪観光局の調査によると、調査対象となったホテルの8割以上が「放置スーツケースが問題になっている」と回答。問題は、忘れ物であるかの確認や、処分の手間といった業務の負担増加だけでありません。大阪・心斎橋のあるホテルでは、昨年だけで処分費用が約27万円に上ったと同紙は報じています。

 さらに、空港では安全対策の観点から警察対応が発生するケースも。現場は迷惑の域を超えたリスクとして受け止め始めています。

 同紙に掲載された専門家のコメントによれば、日本のごみ処理システムが住民向けに設計されているため、観光客にとっては物を捨てることが難しく、結果的に「置き去り」という選択をしてしまうという構造的な問題も指摘されています。

まだまだ遠い問題解決への道

 こうした状況を受けて、一部のホテルではスーツケースの回収サービスを開始したり、回収後にリユースするサービスも導入したりしています。しかし、訪日外国人観光客の急増ペースを考えると、これらの対策だけでは追いつかないのが現状です。

 円安が続くなか、この“スーツケース放置問題”は今後さらに深刻化する可能性があります。観光立国を目指す日本にとって、インバウンドの恩恵を享受しながら、同時に発生する新たな課題にどう対処していくか。問題解決への道はまだまだ遠いと言わざるを得ません。

(Hint-Pot編集部)