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リンゴの表面がベタベタしてくるのはなぜ? 食べても平気? 栄養士が教える栄養メリットの高い食べ方とは
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教えてくれた人:和漢 歩実

これから秋にかけて、おいしさが増すリンゴ。栄養価が高いことから、欧米には「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」とのことわざもあるほどです。そんなリンゴを買い置きしている人も多いと思いますが、いざ食べようと手に取ったら、表面がベタベタしていた……という経験はありませんか。食べても問題ないのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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天然のろうが溶けた自然現象
収穫されたリンゴは、リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸が分泌します。これらの脂肪酸は成熟が進むにつれて増えていき、表面へにじみ出て、リンゴの表面にあるろう物質を溶かすため、べたついて感じるようになります。
このろう物質はリンゴ自身が作り出した天然のもので、水分の蒸発を抑えたり、病原菌の侵入を防いだりして、果実の新鮮さを保つ重要な役割を持っています。そのため、食べても害はありません。
表面のろう物質が溶けてべたつき、つややかに光って見えるこの現象を「油上がり」と呼びます。リンゴの品種によって出やすさに違いがありますが、これは熟してきたサインとされ、おいしく食べられる時期です。べたつきが気になる場合は、食べる前によく水洗いしてください。
一方、リンゴの表面が変色していたり、汁が出ていたりしているものは、おいしく食べられる時期を過ぎてしまっています。乾燥して全体がしぼんでいるもの、触ってみてぷよぷよとやわらかいものも食べないでください。異臭がするもの、カビが生えているものは腐っているので、食べられません。
リンゴの栄養 皮付きで食べたほうが良い?
リンゴが「1日1個で医者いらず」とされる理由のひとつに、食物繊維とカリウムが多く含まれていることが挙げられます。食物繊維は、とくに不溶性食物繊維が多く、便秘や大腸がんの予防で注目されています。また、カリウムには、体内の余分な塩分と水分を調整する効果があり、むくみや高血圧の予防に役立つでしょう。
リンゴはポリフェノールも豊富に含んでいます。なかでも注目は、強い抗酸化作用を持つプロシアニジンです。また、皮の赤い部分に多く含まれるアントシアニンは、目の健康維持に効果があることで知られています。加えて、疲労回復につながるリンゴ酸やクエン酸といった有機酸も含んでいるのが特徴です。
栄養メリットを摂取する観点からいえば、リンゴは皮つきのまま食べるほうが良いでしょう。リンゴの皮付近には、上記のポリフェノールや食物繊維をはじめ、βカロテン、ビタミンCなどが含まれています。しかし、ほとんどは農薬を使用しているため、表面をよく洗って食べることをおすすめします。水だけではなく野菜果物専用の洗剤を使うと良いでしょう。
カットしたリンゴの変色を防ぐために、塩水に浸けることもありますが、長時間浸さないようにしましょう。ビタミンCやカリウム、水溶性食物繊維が流出し、味もしょっぱくなってしまうので気をつけてください。一瞬浸けるだけで十分です。酸化を防ぎ、変色しにくくなります。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾
