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インドなのに「ナマステ」が通じない!? 日本人には理解しがたい“多言語国家”インドの意外な事情

公開日:  /  更新日:

著者:中谷 秋絵

インドは言葉の宝庫

 インドの連邦公用語はヒンディー語、準公用語は英語です。しかし、ヒンディー語は北インドを中心に使われ、南インドではタミル語やテルグ語、カンナダ語などが使われています。

 インド政府に認定された指定言語は22あり、それ以外にも1000とも2000ともいわれる地域の言語が存在しています。

インド紙幣には17の言語が書かれている。世界でも珍しいお札【写真:中谷秋絵】
インド紙幣には17の言語が書かれている。世界でも珍しいお札【写真:中谷秋絵】

 言語ごとに文字も発音も異なるため、インド人同士でも会話できないという事態になるのです。なかには、文字を持たない言語もあります。

 インドは多言語国家であり、人々は母語と英語に加えて、もう1つか2つ他地域の言語を話せるという人はザラです。日本に来てすぐに日本語を使いこなしているインド人に出会うと驚きますが、インドの環境で育つと、多言語の習得にそこまで抵抗がないのかもしれません。

インド人全員が「ナマステ」を使うわけじゃない

 皆さんが知っている「ナマステ」という言葉は、ヒンディー語で「こんにちは」を意味します。両手を合わせて「ナマステ~」とあいさつするインド人が頭に浮かぶのではないでしょうか。

 しかし、これは北インドの言語であるため、南インドでは使われていません。タミル語なら「ヴァナッカム」、テルグ語なら「ナマスカーラム」という言葉が使用されます。

南インドでは、ヒンドゥー寺院の様式も異なる【写真:中谷秋絵】
南インドでは、ヒンドゥー寺院の様式も異なる【写真:中谷秋絵】

 私たち日本人は、「インド=ナマステ」というイメージがあるかもしれませんが、この言葉はインド人全員に対して使えるものではないのです。聞いたところによると、自分たちの言語や文化に誇りを持っている南インドの人に「ナマステ」と言うと、怒るとか怒らないとか……。

言語にも注目してインド映画を観てみよう!

 多言語であり多様性の国、インド。地域が異なれば、言語も文化も異なります。次にインド映画を観るときには、そんな言語や文化の違いにも注目してみると、おもしろい発見があるかもしれません。

 そして、インドを訪ねる際は、ぜひその土地のあいさつを1つでも覚えて使ってみましょう。現地の言葉であいさつすると、とても喜んでくれて、グッと距離が縮まりますよ。お試しあれ!

(中谷 秋絵)

中谷 秋絵(なかたに・あきえ)

取材ライター。新卒3年で心を病み、インドにバックパッカーの旅へ。インドの寛容さに救われ、日系旅行会社で働きながら約2年滞在。その後もたびたびインドを訪れている。2021年よりフリーランスのライターに。自身のインド経験を綴った「どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術」(ANU WORKS出版刊)など、2冊の電子書籍を出版。インドのダンスも踊っている。