Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

ライフスタイル

重婚日記 〜笑撃の結婚生活〜 第4話「日本国内で重婚ってどういうこと!?」

公開日:  /  更新日:

著者:Rocco

教えてくれた人:坂本 尚志

第2子妊娠で衝撃の事実が発覚(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
第2子妊娠で衝撃の事実が発覚(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 戸籍のある日本で「国内で重婚」が起こり得るとは――。役所に提出した婚姻届は正式に受理済みでしたが、本人も気づかないまま制度の盲点にはまっていたようです。普通の結婚生活のはずが、想定外の出来事が続き、日常は一変しました。何が本当で、何が嘘だったのか。これは、波乱と笑い、そしてレジリエンスに満ちた、ひとりの女性の実話です。

 ◇ ◇ ◇

日本の戸籍制度であれば、重婚は生じ得ない

(前回までのあらすじ)結婚2年目に、夫が税金の滞納や保険・年金の未払い、さらには複数の消費者金融からの督促を受けていた多重債務者であることが発覚。借金返済や養育費に追われる夫の実態に、Roccoさんは深い不信と絶望を感じ、「お財布を預けて債務整理か、離婚か」を選択するよう迫ります。どうにか生活を立て直せたものの――。

 日本には世界でも珍しい「戸籍」という制度がある。良くも悪くも血縁や婚姻の記録が一生残るため、重婚など制度的には本来あり得ない。確かに、日本人同士ならそうだ。

 しかし、外国人は別だ。外国人には、日本の戸籍がない。国際結婚をしても、日本人の戸籍に相手の名前が付記されるだけで、戸籍そのものを持つわけではない。つまり、役所の戸籍システム上では、外国人の婚姻歴を突き合わせることはできないのだ。

 戸籍という制度に慣れ親しんできた私たちには、「戸籍制度の外」なんて誰も知らないし、知る必要もない。まさか自分が、その制度の外枠の隙間にスッポリハマる日が来るなんて、夢にも思わなかった。

大使館報告で発覚した衝撃の事実

 重婚が発覚したきっかけは、大使館への婚姻報告だった。大使館への報告は義務ではなく、任意である。しかし、過去に日本での婚姻が報告されていれば、「すでに結婚している」と突合され、重婚が明らかになる。夫は、前妻との婚姻を大使館報告しており、その子どもは米国籍を貰っていた。

 結婚後、「そのうち報告に行こう」と話していたのに、夫は理由をつけて先延ばしをした。本来ならこうした手続きはタイムリーに行うべきだし、放置されれば「おや? 何かあるのでは?」と疑いのアンテナが立つはず。

 でも、夫は税金や公共料金も払わないのが当たり前。あらゆる手続きを常に後回しにする人だったので、私は「またその一環」だと思っていた。

 私自身も、毎日仕事と遊びで忙しくしていたので、そのうち大使館申請のことも忘れてしまっていた。

 アメリカ国外でアメリカ国籍を持つ親から生まれた子どもは、アメリカ大使館に申請すれば、アメリカ国籍を取得できる。子どもができたので、米国籍を貰うために、私は夫を大使館に行こうと、また誘うようになった。それでも夫は腰が重かった。

 結婚6年目、2人目の子どもを妊娠した後、「いい加減、大使館に行こう」と強く急かした。すると夫はついに堪忍したのか、衝撃の事実を告白した。

「実は離婚していない。だから大使館に行けない」

 その瞬間、頭が真っ白になった。

――嘘でしょ? 離婚していないってどういうこと? そんなことあり得るの? 私たちは、ちゃんと役所で婚姻届が受理されて、戸籍上も住民票上も、夫婦であるのに!? そもそも別居して家も売ったのに、なんで!? 前の奥さんと婚姻生活を続けたかったの……?

 離婚していないということは、そもそも結婚前から全部嘘だったということか……。しかも、私がお財布を預かって以降、夫の代わりに毎月「養育費」を振り込んでいたけど、離婚していないってことは、あれは「生活費」なの? おまけに、子どもの誕生日や記念日には、夫の代わりに私が別途お金を送っていたけど……。これじゃまるで私がお人好しなのかバカなのか。

 もう、何が真実で何が嘘か、全部わからなくなった。

【重婚について】
刑法第184条では、すでに配偶者がいる者が別の相手と婚姻した場合を「重婚罪」と定めています。ただし、実際の現場では、意図的なものばかりでなく、外国との戸籍や手続き上の制度の違いや、ミス・誤認などによって、意図せず結果的に重婚状態になってしまうケースもあり得ます(清陵法律事務所・坂本尚志)。

(Rocco)

Rocco(ロッコ)

20年近い結婚生活で、次々に起こる波乱を、泣きながらも笑いに変えて乗り越えてきた。とくに、戸籍制度の落とし穴から生じた「国内重婚」という、聞いたこともない状況に直面し、検索しても事例が見つからず、孤立無援の中で悩んだ経験は大きい。実際の体験をもとに、戸籍制度とレジリエンスをテーマに綴っています。

☆質問は匿名で送れるマシュマロからお寄せください。

坂本 尚志(さかもと・たかし)

弁護士。清陵法律事務所所長。プロボクサー。東京大学法学部卒業。詐欺・消費者問題に注力。https://seiryo-law.com/